研究課題
本研究では難治性癌の分子生物学的解析に基づき、幹細胞性、腫瘍形成能、転移能などのメカニズムを解明し、新規バイオマーカー、治療標的を同定することを目的としている。平成26年度研究実績として、ヒト膵癌細胞に内在する可視化癌幹細胞が高い浸潤能、肝転移能を示すことを確認し、転移巣における可視化癌幹細胞の特異的局在性を見出した。さらに平成25年度研究実績により同定した膵癌幹細胞の高発現遺伝子X1の導入によって、膵癌細胞の運動能が上昇することを見出した。shRNAを用いた恒常的X1ノックダウンによって、膵癌幹細胞の浸潤能、肝転移能が顕著に抑制された。さらに膵癌臨床例の解析でも、全例において転移巣でのX1高発現を認めた。癌浸潤および転移は、膵癌患者の予後を決定する因子であり、X1が重要な治療標的となることが示唆された。X1は、。現在、X1高発現のエピゲノム解析を進めている。さらにヒト膵神経内分泌腫瘍(PNET)から癌幹細胞分画を抽出し、スフェア形成能や造腫瘍性が高いことを証明した。PNET癌幹細胞の高発現分子としてX2を同定し、X2阻害剤によってスフェア形成能、造腫瘍性が抑制されることを証明した。臨床検体の解析でもPNETにおけるX2高発現を確認し、周囲組織への浸潤と有意な相関を認めており、治療標的としての意義が示唆された。またPNETのエピゲノム解析による特異的バイオマーカーの同定、定量的新生血管評価モデル開発による治療抵抗性メカニズムの解析を開始した。我々が作成したプロテアソーム活性可視化トランスジェニックマウスから膵オルガノイドの作成を始めており、膵発癌における幹細胞性変化について解析を進めている。このように多様な視点から難治性消化器癌の克服を目指して、臨床開発に直結する研究実績を蓄積している。
1: 当初の計画以上に進展している
ヒト膵癌、PNETの癌幹細胞分画の抽出によって、新たな分子標的を同定できた。膵癌では癌転移を抑制することが証明され、治療応用への発展が期待できる画期的な研究成果である。その他、PNETのエピゲノム解析、抗血管新生治療に対する抵抗メカニズム解析、新規トランスジェニックマウスにおける膵発癌解析など多様な研究が進行している。
本研究課題によってヒト膵癌幹細胞から同定されたX1は転移促進因子であることが証明されており、そのエピゲノム解析による発現機序解明を進めている。さらにエピゲノム変化による癌幹細胞性維持メカニズムについて解析する方針である。またPNETのエピゲノム解析を進めて特異的バイオマーカーの同定し、その分子メカニズムを解明する。定量的新生血管評価モデルに基づいて治療抵抗性株を作成し、その分子メカニズムの解明する。プロテアソーム活性可視化トランスジェニックマウスによる膵オルガノイドの作成を進め、膵発癌における幹細胞性変化を解析する方針である。既に京都大学iPS研究所・川口義弥教授との連携研究を開始しており、新規癌治療および再生医療への応用展開を推進する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 18件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Sciences
巻: 22 ページ: 531-537
10.1002/jhbp.248.
Genome Research
巻: 25 ページ: 328-337
10.1101/gr.175240.114.
Annals of Surgical Oncology
巻: 22 ページ: 3079-3086.
10.1245/s10434-014-4292-3.
American Journal of Surgery
巻: 210 ページ: 561-569.
10.1016/j.amjsurg.2015.03.027.
巻: 209 ページ: 199-205.
10.1016/j.amjsurg.2014.03.009.
Cancer Science
巻: 106 ページ: 929-937.
10.1111/cas.12694.
Asian Journal of Endoscopic Surgery
巻: in press ページ: in press
巻: 21(4) ページ: 1314-1322.
10.1245/s10434-013-3430-7
Oncology
巻: 86(1) ページ: 53-62
10.1159/000356643.
American Journal of Surgery,
巻: 207(6) ページ: 863-869
10.1016/j.amjsurg.2013.06.009.
巻: 208(3) ページ: 450-456.
10.1016/j.amjsurg.2014.01.015.
Oncology Reports
巻: 31(3) ページ: 1133-1138.
10.3892/or.2013.2952.
Journal of Gastroenterology
巻: 49(3) ページ: 502-510.
10.1007/s00535-013-0791-4.
巻: 49(9) ページ: 1352-1361.
10.1007/s00535-013-0899-6
Surgery Today
巻: 44(5) ページ: 976-981.
10.1007/s00595-013-0584-7.
Hepatogastroenterology
巻: 61 ページ: 712-716.
Hepatology Research
巻: 44(14) ページ: E437-446.
10.1111/hepr.12335