研究課題
これまで我々は、交感神経系や神経ペプチドが骨代謝の制御に深く関与していることを明らかにしてきた。さらに最近、我々は骨代謝の恒常性維持に感覚神経が重要な働きを果たしていることを明らかにした。本申請課題では、感覚神経系の骨代謝における生理的意義について、その詳細な分子基盤を解明するとともに、感覚神経系を標的とした新しい視点からの骨粗鬆症治療、骨再生法の確立を目指した。①骨芽細胞、神経および感覚神経特異的セマフォリン(Sema3A)欠損マウスの作成と解析当初計画通り、骨芽細胞特異的および神経特異的Sema3A欠損マウスの詳細な解析を行った。その結果、昨年度、我々が見出した感覚神経による骨代謝調節機構(竹田ら Nature 2013)に加えて、神経特異的Sema3A欠損マウスでは骨芽細胞自身には異常がないことが明らかとなった。また、さらに感覚神経特異的Sema3A欠損マウスの作出にも成功し、解析に必要な十分な個体数を得た。②骨感覚神経の発達におけるセマフォリンシグナルの解明-組織特異的Sema3A 共受容体(Neuropilin)欠損マウスを用いた検討-セマフォリンのシグナル伝達にはSema3A 共受容体であるNeuropilin (Npn)が重要な役割を果たす。Sema3Aの分子作用機構を明らかにするために、本年度は、神経あるいは感覚神経特異的、骨芽細胞特異的にNpn を欠損するマウスの作出に成功した。予備的な検討において、神経特異的Npn欠損マウスは骨量の低下傾向を示した。したがって、Sema3Aは神経系に直接作用し、骨代謝を調節しうることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の計画申請書で提示した組織特異的Sema欠損マウスおよび組織特異的Sema受容体欠損マウスの作出は順調に達成した。また、それらの解析においても、前者についてはほぼ完了し、後者についても、すでに予備的な結果が得られ始めている。したがって、当初研究目的で提示した本研究の研究計画はほぼ順調に進展しているものと考えられる。
当初計画通り、本年度は、昨年度から継続して、組織特異的Sema受容体(Neuropilin)欠損マウスを用いた検討を継続するとともに、骨におけるメカニカルストレス感知における骨感覚神経の意義の解明を行う。また、ヒトサンプルを用いた、骨粗鬆症発症における骨感覚神経の病態生理的意義の解明にも取り組む。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 12件) 図書 (20件)
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