研究課題/領域番号 |
25253092
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
生水 真紀夫 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30226302)
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研究分担者 |
幡野 雅彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20208523)
石川 博士 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70553973)
花岡 英紀 千葉大学, 医学部附属病院, 教授 (80361426)
碓井 宏和 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90375634)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 産婦人科学 / 生殖医学 / アロマターゼ |
研究実績の概要 |
平成25年度の基礎的検討を踏まえて、幼若マウス(C57BL/6J, JCL)体外排卵系のさらなる改変・改良を実施した。新たに低吸着培養系による体外排卵系を確立した。これにより、卵胞破裂がより容易に判定できるようになった。これらの系を用いて、検討した結果、letrozole(0.01-10μM)添加により濃度依存性に卵胞破裂が抑制されること、このときの培地内のテストステロン濃度は上昇しエストラジオールが検出されないことを確認した。この系に破裂卵胞と同程度の濃度(300-500pg/ml)になるようにエストラジオールを添加しても排卵は回復しなかった。Letrozoleと同様の卵胞破裂抑制は、ステロイド性アロマターゼ阻害薬であるexamestane(0.1-10μM)添加によっても観察された。次に、体外排卵系にアンドロゲン受容体拮抗薬(flutamide)を添加したところ、卵胞破裂が促進された。同様の破裂促進効果はCYP17A阻害薬(avirateron)でも部分的に再現された。これらの実験から、アロマターゼ阻害による排卵抑制がエストロゲン産生の低下によるものではなく、アンドロゲン作用の低下によるものであるとの仮説が支持された。アロマターゼKOマウスによる体外排卵系によるアロマターゼknock in 実験のための卵胞内遺伝子発現系を確立した。アンドロゲン作用拮抗薬あるいは合成阻害薬のヒトへの投与研究の準備のため体外受精の際に採取された卵胞液アンドロゲン濃度の測定を実施し、自然周期・アロマターゼ阻害剤投与周期・エストロゲン受容体拮抗薬投与周期における基礎的情報の収集を行った。さらに、ヒトへの阻害剤投与に備え、体外受精時に採取された顆粒膜細胞に阻害剤添加してステロイド合成に対する影響(濃度依存性)を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体外排卵系の改良と改変を進めた結果、卵胞の破裂をより容易に判定できる実験系が作成できた。本年度はこの系を用いて、アンドロゲン濃度調節の鍵となる2つの酵素(CYP19A1、CYP17A1)の活性阻害薬やエストロゲン補充実験が可能となり、「成熟後の卵胞ではアンドロゲン作用の低下が卵胞破裂への切り替えに関わっている」との仮説を支持するための輻輳した実験を進めることができた。今後、この実験系を用いてアンドロゲン作用の低下がもたらす分子変化を検討する予定である。さらに、この排卵系を用いてアロマターゼknock inを実施する系を立ち上げることができ、アロマターゼノックアウトマウス卵胞の体外排卵系でのknock in 実験の準備を整えることができた。しかしながら、アロマターゼノックアウトマウスは、ウィルス感染の問題を解決できず実施できなかった。ヒト卵胞液の検体採取と保存は予定どおり進行した。アンドロゲン阻害剤のヒトへの投与にそなえ、ヒト卵胞由来顆粒膜細胞のin vivoでの投与実験を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
アロマターゼノックアウトマウスの入手が困難なため、別系統のアロマターゼノックアウトマウスの入手を検討する。別系統2種について、マウスの詳細と入手可能性の問い合わせを行う。 現状では、アンドロゲン受容体拮抗薬や合成阻害薬のヒトへの投与は困難であるが、アロマターゼ阻害剤の投与は行われている。そこで、アロマターゼ阻害剤投与の卵胞破裂への影響を解析することにより、アロマターゼの卵胞発育・排卵機序の解明を実施する。このためのヒト材料は、研究協力施設の倫理委員会の承認を得て体外受精患者から提供を受けることができる。
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