研究課題
基盤研究(A)
緑内障は眼圧というメカノストレスに対する視神経乳頭の応答ととらえることができる。その応答の一つとしてアストロサイトの反応が重要である。しかし、この分子機構については現在のところ全く不明である。そこで、既報を応用し低週齢マウスから視神経乳頭アストロサイトの純粋に単離培養する方法を用いて、培養細胞を作成しATP刺激や細胞伸展装置による圧ストレス刺激に対する細胞内Ca 応答をCa imagingにて測定した。刺激後、アストロサイト内のCa濃度は変化し、特にアストロサイトの形態が変化した部位での、細胞内Ca濃度が変化することが観察された。これは、視神経乳頭部では細胞外シグナル刺激に対して形態を変容する能力を持っている可能性が示唆された。また、アストロサイトは生体でシンチウムを形成していると考えられているが、培養細胞がconfluentの状態となると、シンチウムの構造的特徴の一つであるコネキシン43という細胞間の交通を司るタンパク質が細胞間接触部に発現していた。これらの特徴を持つ培養細胞系の確立により、我々が予定しているiPS細胞から作成する乳頭アストロサイトのメカノストレス表現型を検討することができる。また、遺伝子改変マウスからアストロサイトを入手し緑内障発症のメカニズムを解析するために、まず正常マウスを用い緑内障モデルとなるレーザー誘発高眼圧モデルマウスを作成した。若年CD-1マウスに麻酔下で角膜輪部静脈および上強膜静脈にダイオードレーザーを照射し、上強膜静脈は細い静脈を残し中枢側まで照射を行うことで作成し、C57BL6マウスへの応用も行った。レーザー後の眼圧の経過を記録し21mmHg以上を高眼圧としその後の実験に用いた。さらに、Eirakuらの方法を用いて作成した、マウスの眼杯への途上である眼胞発芽時にアストロサイトマーカーとその前駆細胞のマーカーの発現を確認した。
3: やや遅れている
緑内障の発症には未知の遺伝学的背景が関与している可能性がある。そこで、来年度に予定されていた、異なった緑内障の表現型を示す患者のゲノム情報を得るため、共同研究を行いヒト血液サンプルを採取しDNAを抽出した。今後の解析により、我々が目的としている緑内障感受性変異の検討が可能となる。この実験を追加したため、本年度に予定されていた、いくつかのステップが遅れている。アストロサイトはお互いにgap junctionでつながりシンチウムを形成しており、組織として圧力や細胞外シグナルを感受するが、そのシグナルを受容する構造体として、血管と接するアストロサイトは血管経由のシグナルを、篩状板に接するアストロサイトは直接圧変化を感受するダイレクトセンシング機構を持つと考えられている。そこで初年度に二光子励起顕微鏡を用い生体乳頭深部撮影法の確立と、生体アストロサイトならびにアストロサイトシンチウムの活動状態を高眼圧ストレスに対するレスポンス測定する予定であった。その点では、進展しなかったが高眼圧ストレスのためのモデル作成技術を確立しており、今後の進展が期待される。つぎに、メカノストレス下のアストロサイトの電気生理学的反応を検討する予定であったが、その実験系の確立に至らなかった。しかし、さまざまな培養皿でのアストロサイト細胞の培養に成功しており、今後パッチクランプでの解析が可能である。
アストロサイトはお互いにgap junctionでつながりシンチウムを形成している。血管と接するアストロサイトは血管経由のシグナルを、篩状板に接するアストロサイトは直接圧変化を感受するダイレクトセンシング機構を持つと考えられている。そこで、生体内で視神経乳頭アストロサイトが圧ストレスにどのように反応するかを検討するために、レーザー誘発による高眼圧緑内障モデルマウスにおいてアストロサイトの形態変化と網膜神経節細胞(視神経軸索)障害とがどう関連するかについて、二光子励起顕微鏡を用いて経時的に観察する。当該施設の他グループも二光子励起顕微鏡を用いた生体乳頭深部撮影法を用いる計画がなされており、共同で、基本手技を確立することで本年度に遅れた工程を推進する。それにより本年度は、生体内でのアストロサイトシンチウムの活動状態とストレスによるレスポンスの検討が可能となる。また、安定した観察系を確立するため、EGFP-GFAPマウスを用いた高眼圧モデルにおいて、アストロサイトシンチウム構造を観察する。さらに篩板周囲に存在するアストロサイトのうち、圧を感受し細胞応答する反応性アストロサイトは主にType1Bと考えられている。そこで、培養可能なアストロサイトの細胞系譜をマーカーを用いて免疫組織学的に単離し、Type1Bアストロサイトの特異表面マーカーを同定する。同定を加速するため、マイクロアレイでの検討を行う。つぎに、メカノストレス下のアストロサイトの電気生理学的反応を検討する。培養細胞系で細胞特異的解析を行うため、EGFP-GFAPマウスを用いて、細胞同定下でパッチクランプにより電気測定を行う。
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