研究課題/領域番号 |
25253093
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西田 幸二 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40244610)
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研究分担者 |
松下 賢治 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40437405)
辻川 元一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70419472)
林 竜平 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70535278)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 眼病理学 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
緑内障は視神経乳頭の中でも篩状板が最初に障害を受ける慢性視神経障害疾患である。篩状板には視神経を取り囲むようにアストロサイトが多数存在している。脳では神経と血管、さらにグリア細胞であるアストロサイトがneurovascular unitという単位を構成し互いに伝達し合うことで機能するという概念が浸透しつつある。この概念に基づいて、今までは神経の支持組織として思われていたアストロサイトが神経に対し機能的に重要な働きをしていることが報告されている。しかし生体における視神経乳頭内のneurovascular unitに関しては現時点では証明されていない。また、アストロサイトが圧負荷に対し増殖、遊走、変形するreactiveアストロサイトという状態になることは報告されているがそのメカニズムは知られていない。そこで我々はまず既報を応用して生後1日齢のマウスから乳頭アストロサイトの単離培養の効率な方法を確立した。その培養アストロサイトを用いて、初年度は神経伝達物質であるATPや伸展刺激装置を用いた伸展刺激に対する細胞内のCa濃度の動態を観察した。しかし、伸展刺激装置に用いたチャンバーに培養したアストロサイトでは伸展刺激に対しチャンバーから用意に剥離するという難点があった。そこで本年はチャンバーのコーティング条件を検討することで、伸展刺激に対して接着を持続させることができ長時間観察することに成功した。 伸展刺激後、密に繋がっているアストロサイトの突起が離れて短く太くなった後に再び接着する様子がタイムラプスで観察できた。さらにアストロサイトのマーカーであるGFAPのmRNAの発現の上昇も確認できた。 さらに初年度にEirakuらの3次元網膜作製法を改変することでマウスES細胞からアストロサイトの誘導に成功したが、本年度はこの方法がより効率的な誘導法であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養乳頭アストロサイトに対する伸展刺激負荷実験では培養チャンバーのコーティングを工夫することで細胞が剥がれることなく、伸展刺激に対する形態反応を具体的に動的に観察することができた。このことにより、反応している細胞における電気生理学的反応を観察することが可能になると思われる。 またマウスES細胞からより効率的にアストロサイトを誘導することが可能となったが、乳頭アストロサイトに特異的なマーカーXを用いた生細胞の単離には成功しておらず今後検討が必要である。同時に、ES細胞で用いた方法をiPS細胞に応用する予定である。 当初の予定であった二光子顕微鏡の用いた生体における高眼圧に対するアストロサイトの反応の観察については進展していない。眼圧上昇しにくいblackマウスに対するより効率的なレーザー誘発高眼圧モデルマウスの作製の検討をしたが、眼圧上昇は1週間程度に限定され出血や炎症も伴っている。二次的な眼圧上昇の影響があるため今後原発緑内障の病態に近い眼圧上昇のモデル作製の検討の必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
培養乳頭アストロサイトに対する伸展刺激負荷実験においてはパッチクランプによる電気生理学的反応を観察しアポトーシス活性も観察する。さらにその反応が伸展刺激依存性であることを確認するため刺激負荷の強度や周期の条件を変えて観察する。アストロサイト細胞の同定を行うためにEGFP-GFAPマウスの導入も検討する。乳頭アストロサイトの特異的マーカーXを用いた生細胞の状態での単離方法を検討する必要がある。また、特異的マーカーを探索するためマイクロアレイ解析を行う。細胞の成長が早いマウスES細胞で方法を検討しながら、同時にマウスiPS細胞への応用も行う一方、ヒト由来細胞のiPS細胞から同様のアストロサイトの誘導法を検討する。二光子顕微鏡の用いた生体における高眼圧に対するアストロサイトの反応の観察においては、眼圧上昇モデルの再検討を行い完成させる。
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