研究課題/領域番号 |
25253094
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田口 智章 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20197247)
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研究分担者 |
野中 和明 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90128067)
大賀 正一 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60233053)
中山 功一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50420609)
小田 義直 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70291515)
井原 健二 九州大学, 大学病院, 准教授 (80294932)
山座 孝義 九州大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (80304814)
山座 治義 九州大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (30336151)
柳 佑典 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30596664)
家入 里志 九州大学, 大学病院, 講師 (00363359)
林田 真 九州大学, 大学病院, 助教 (70452761)
永田 公二 九州大学, 大学病院, 助教 (20419568)
吉丸 耕一朗 九州大学, 大学病院, その他 (60711190)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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キーワード | 再生医学 / 幹細胞移植 / 代謝性肝疾患 / 先天性横隔膜ヘルニア / 肺低形成 / 肝組織工学 |
研究概要 |
肝臓:SHEDの肝細胞への分化誘導に成功した。分化誘導した細胞は形態的に肝細胞に類似し、アルブミン、Tyrosine Aminotransferase、CK18などの肝細胞マーカーの発現や、上清中へのアルブミン、尿素の産生を確認した。SHED由来肝細胞の表面抗原をフローサイトメトリーで解析し、HLA classIIおよびCD80,CD86といった補助刺激分子の発現が低く、非自己として認識されにくいことを確認した。さらに、ヒト末梢血由来T細胞との共培養でT細胞の増殖抑制、アポトーシスを誘導する結果が得られた。さらに四塩化炭素誘導肝硬変モデルマウスに対して非免疫抑制下に経脾臓的に投与。拒絶されることなく投与後4週目でも肝臓内に生着していることを確認した。 Wilson病ラットに対し、SHED由来肝細胞を経脾臓的に投与し、疾患モデル動物の生命予後の有意な延長を認めた。また、血液生化学的検査にて黄疸、肝機能障害の改善を認め、病理学的検討では肝線維化の改善と銅沈着の軽減を認めた。この効果はSHEDよりもSHED由来肝細胞のほうが優れるているという結果を得た。 平行して、ラット初代肝細胞、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、骨髄由来間葉系幹細胞のヘテロスフェロイドをバイオ3Dプリンターを用いて立体的に積み上げることで立体的肝細胞構造体の作成を行った。培養1週間で、内部に内皮細胞で被覆された毛細血管様の構造が構築された。 横隔膜:ヒト横紋筋芽細胞よりロボットシステムを用いて1x1cmの横紋筋シートを作製することに成功した。しかし、移植に耐える得る強度はまだ得られていない。また、ラット成獣肺から間葉系幹細胞を採取し、胎生12日目の先天性横隔膜モデルラット肺に投与したところ、低形成肺の肺胞面積を増加し、肺胞上皮細胞や肺血管における肺低形成状態の改善を示唆する所見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り乳歯幹細胞の肝細胞への分化誘導法を確立および、免疫寛容性が高いことをin vitroで確認した。さらには、実際に小動物に対して非免疫抑制下に移植実験を行い拒絶されないことを確認した点や、疾患モデル動物に対してSHED由来肝細胞の移植実験を行い、生命予後の有意な延長を認め、肝機能障害の改善を確認した点はより進展した事項と考える。これらの結果から、SHED由来肝細胞は免疫学的安全性および肝障害に対する有効性が高いことが確認され、臨床応用において有用な細胞ソースであることが実証された。立体組織化もラット初代肝細胞を用いて成功したため、今後はSHEDを用いた立体肝組織の最適化と有効性の評価が必要になる。横隔膜ヘルニアに対する研究においては、幹細胞移植が肺低形成に対する治療効果が有することを確認したが、今後はSHEDでの有効性の評価が必要と考える。また、培養ヒト骨格筋芽細胞を用いて細胞シートの作成に成功したが、移植に耐えうる強度には達しておらず今後も検討が必要である。SHEDの横紋筋細胞への誘導法はまだ確立できておらず、さらに研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓においては、SHED由来肝細胞の細胞移植による有効性が確認できたため、今後はSHED由来肝細胞での立体肝組織の作成と有効性実証のための非臨床試験をミニブタを用いて進めていく予定である。具体的には、1)ヒト乳歯幹細胞由来肝細胞を用いた立体肝組織の最適化:ヒト歯髄幹細胞由来肝細胞よりバイオ3Dプリンターを用いて、立体肝組織を作製する。立体肝組織の細胞の生存率及びアンモニア代謝やアルブミン産生などを指標に最適化を行う。 2)ミニブタを用いた立体肝組織移植の有効性評価:ヒト乳歯幹細胞を用いた立体肝組織を同種四塩化炭素誘導性肝障害モデルミニブタに対し腹腔鏡を用いて肝臓内に埋没移植する。安全な移植手技の確立と治療効果を検証する。 横隔膜においては、引き続き移植可能な横紋筋シートの作製を進めていく。肺低形成に対する治療では組織幹細胞の有効性が確認されたため、今後はSHEDの有効性の検証を進めていく。具体的には、1) ヒト培養横紋筋芽細胞を用いた横紋筋シートの作製:ヒト培養横紋筋芽細胞から細胞凝集体(スフェロイド)を作製し、ロボットシステムを用いて横紋筋シートを作製する。作製したシートの強度解析を行う。特に、HUVECやMSCとの共培養や、還流培養、伸展培養などを用いて強度の向上を図る。 2)外科的CDHモデルラットにおける横隔膜シートを用いた横隔膜修復試験:ヌードラットにおいて左横隔膜に横隔膜欠損孔を作製する。ヒト培養横紋筋細胞横隔膜シートを用いて欠損孔を修復する。ラットの生存率およびシートの形態的、病理学的評価を行う。 3) ニトロフェン誘導CDHモデルラットの低形成肺に対するSHED投与の有効性、安全性確認:肺低形成を伴うCDHモデルラットにSHEDを経静脈投与。肺成熟効果の解析を行う。
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