研究課題/領域番号 |
25253096
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小倉 裕司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301265)
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研究分担者 |
吉矢 和久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40379201)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50196474)
松本 直也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50359808)
入澤 太郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50379202)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 侵襲 / 再生 / 免疫 / 炎症 / 幹細胞 / 腸管 / 敗血症 |
研究実績の概要 |
我々は、修復・再生を担う幹細胞の動向が侵襲時の再生応答を主に制御することを証明してきた。本研究では、侵襲時再生応答、免疫応答の両面からみた新たな治療戦略として、血管内皮及び腸管上皮の修復・再生効果をもつ幹細胞移植法を確立するために、以下の3点に目標を絞り実施する。①外傷、敗血症、two-hit modelの異なる多臓器障害モデルにおいて再生応答(血管内皮、腸管上皮)と免疫応答(自然免疫、獲得免疫)の関連を経時的に評価する。②各侵襲モデルにおいて、骨髄間葉系幹細胞、骨髄由来単核球細胞、腸管上皮幹細胞の細胞移植を行い、各細胞移植法の有効性(生存率など)と免疫応答制御メカニズムを比較検討する。③各細胞移植による血管内皮、腸管上皮における再生応答、免疫応答遺伝子の発現をマイクロアレー法を用いて明らかにする。 本年度は、特に重症病態において腸管上皮幹細胞(intestinal stem cell)の機能が低下することにより腸管上皮の再生が阻害され、腸管蠕動不全やバリア機能不全を来しているという仮説を立て、研究を進めた。C57BL/6Jマウスの腸管上皮幹細胞に特異的にEnhanced Green Fluorescent Protaion(EGFP)が発現するLgr5-CreERマウスを用いて、敗血症モデルマウスを作製し、全身侵襲時の腸管上皮幹細胞の動態を経時的に解析し、全身侵襲における腸管上皮幹細胞機能障害と腸内細菌叢破綻との関係を明らかにする研究を行った。BrdU(Bromodeoxyuridine:臭素化デオキシウリジン)を用いて健常時と敗血症時の陰窩・絨毛の細胞分裂状態を評価したうえで、Lgr5-CreERマウスを用いて腸管上皮幹細胞の変化を見た結果、侵襲に伴い腸管上皮幹細胞機能が低下することが確認された。今後、多臓器障害モデルにおける再生応答指標と免疫応答指標(自然免疫、獲得免疫)の連関を解析し、多臓器障害の進行過程における役割を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外傷、敗血症、two-hit 多臓器障害モデルにおける再生応答、免疫応答の連関に関する研究を以下のように進める。再生応答指標として、血中に存在する血管内皮前駆細胞、血管内皮細胞、および血管内皮マイクロパーテイクルをフローサイトメトリー法で定量評価する。腸管上皮細胞に関しては、特異的転写因子Lgr5を蛍光表示するマウスを用いて、各侵襲に伴い腸管上皮細胞の局在と増減の推移を評価する。また、細胞増殖を定量化するBrdUを用いて腸管上皮細胞の分化能を経時的に評価する。さらに、種々の臓器における細胞死(アポトーシス)を特に血管内皮、腸管上皮に注目してTUNEL染色で定量評価する。血管内皮の再生因子として、アポトーシスを抑制するangiopoietin-1、survivinの発現、およびアポトーシス関連因子であるFas抗原の発現を同時に染色法で定量評価する。骨髄機能として、血中に存在する造血系前駆細胞(CD34陽性)をフローサイトメトリー法で定量評価し、骨髄間質幹細胞の成長促進因子であるSDF-1の血中濃度を測定する。骨髄においてSDF-1のレセプターであるCXCR4発現を染色法で定量評価する。2)免疫応答指標として、自然免疫系は炎症反応のトリガーとなる血中DAMPs(ダメージ関連分子パターン:遊離DNA、RNA、HMGB-1など)とレセプターを介して侵襲時炎症反応を惹起する細胞内インフラマソームの活性化を評価する。血中遊離DNA、RNA量の解析は、蛍光マイクロプレートリーダーで行い、HMGB-1測定はELISA法で行う。インフラマソームの活性化は、脾臓、リンパ節、腸管上皮における培養細胞内caspase-1活性化産物(caspase-1 p10/p20)としてフローサイトメトリー法で評価する。以上の研究が概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
多臓器障害ラットモデルにおいて、再生応答と免疫応答を経時的に定量評価し、連関をさらに明らかにする。種々の臓器における細胞死(アポトーシス)を特に血管内皮、腸管上皮に注目してTUNEL染色で定量評価する。血管内皮の再生因子として、アポトーシスを抑制するangiopoietin-1、survivinの発現、およびアポトーシス関連因子であるFas抗原の発現を同時に染色法で定量評価する。骨髄機能として、血中に存在する造血系前駆細胞(CD34陽性)をフローサイトメトリー法で定量評価し、骨髄間質幹細胞の成長促進因子であるSDF-1の血中濃度を測定する。骨髄においてSDF-1のレセプターであるCXCR4発現を染色法で定量評価する。2)免疫応答指標として、自然免疫系は炎症反応のトリガーとなる血中DAMPs(ダメージ関連分子パターン:遊離DNA、RNA、HMGB-1など)とレセプターを介して侵襲時炎症反応を惹起する細胞内インフラマソームの活性化を評価する。血中遊離DNA、RNA量の解析は、蛍光マイクロプレートリーダーで行い、HMGB-1測定はELISA法で行う。インフラマソームの活性化は、脾臓、リンパ節、腸管上皮における培養細胞内caspase-1活性化産物(caspase-1 p10/p20)としてフローサイトメトリー法で評価する。炎症反応指標(各種血中サイトカイン、ケモカイン値)の変動も同時に評価する。一方、獲得免疫系は侵襲時炎症反応に対して抗炎症効果を発揮するTregの活性化を主に評価する。Tregの活性化は、脾臓、リンパ節、腸管上皮におけるTreg細胞数とCD4T細胞の活性・増殖抑制能としてフローサイトメトリー法で評価する。以上の評価に基づき、各多臓器障害モデルにおける再生応答指標と免疫応答指標(自然免疫、獲得免疫)の連関を解析し、多臓器障害の進行過程における役割を明らかにする。
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