研究課題/領域番号 |
25253102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
矢谷 博文 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80174530)
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研究分担者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30379078)
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (50367520)
萱島 浩輝 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50632121)
峯 篤史 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60379758)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テーラーメイド医療 / 術前診断 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、バイオテクノロジー的アプローチでは、前年度に引き続き、歯科治療に関連して歯槽骨反応に特徴を示す患者の選定を行い、インプラントにオッセオインテグレーション不全を示す患者1名を選定した。この患者より採取した歯肉から線維芽細胞を樹立し、現在この細胞からiPS細胞を作製している。また、マウスiPS細胞を用いて確立した骨芽細胞への分化誘導法と同様のプロトコルでは、ヒトiPS細胞では成熟した骨芽細胞への分化を示さないことが明らかとなったため、プロトコルの改良を行った。その結果、マウスiPS細胞の凝集体を浮遊培養で振盪しながら分化誘導することで、三次元的な骨様細胞構造体が作製可能であることが明らかとなった。現在、この方法をヒトiPS細胞に応用し、誘導方法の検討を行っている。生体機能学的アプローチでは、実験動物において、急性ストレスを与えると一時的に睡眠が減少し覚醒が増加したが、睡眠・覚醒中の咀嚼筋活動の様態に変化がある可能性が考えられた。成人被験者では、睡眠時ブラキシズムの重症度によって、一部の睡眠変数に差を認めたが、主観的ストレス評価や唾液中のストレス関連物質の含有量に差を認めない傾向があった。材料学的アプローチでは,歯質の個人差およびそれにともなう材料‐生体界面の評価において、従属変数を接着強さ,共変量を気泡・レジンおよび象牙質のX線吸収係数・接着部位・接着面積,固定因子を歯の個体差として一般線形モデルで解析した結果,歯質の差が接着強さに影響を及ぼすことを明らかにした。また、材料‐生体界面に及ぼす唾液の影響において、接着被着面(CAD/CAM用レジンブロック)に唾液を作用させ、より臨床に近い環境における接着試験を行う実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオテクノロジー的アプローチについては、オッセオインテグレーションに特徴を示す患者1名が選定でき、現在iPS細胞の作製に取り掛かっている。今後さらに同様の患者を数名選定する必要がある。並行して、試験管内での研究では、iPS細胞の骨芽細胞分化誘導技術が確立しつつあり、研究は進展している。生体機能学的アプローチにおいては、動物実験、ヒトの実験ともにサンプル数を増やすことができた。また、動物実験では、急性ストレスに対して睡眠・咀嚼筋活動に質的な変化を見出し、ヒトにおいてはストレスと睡眠・咀嚼筋活動に重症度別の比較が可能となった。材料学的アプローチについては、初年度に設置したOCTを用いて順調に非破壊的観察を実現している.また,唾液による接着阻害を確認する実験系を確立し,本年度の研究準備が整っている.
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今後の研究の推進方策 |
バイオテクノロジー的アプローチでは、選定した患者の歯肉線維芽細胞を用いて歯槽骨反応の個人差に関連する遺伝子多型の解析を行うと共に、iPS細胞を樹立して骨芽細胞への分化誘導し、細胞レベルでの特徴を解析していく。同時に、顎堤吸収が重度あるいはインプラントにオッセオインテグレーション不全を示す患者の選定を行い、歯肉細胞を採取する。これら患者の試料を用いて歯槽骨反応の個人差に関連する遺伝子多型の探索を試みる。 また、生体機能学的アプローチでは、動物実験、ヒト実験の共にストレスに対する睡眠覚醒状態・顎口腔運動の応答性特性に関わる生体調節因子を定量的に解析して、個体差に寄与する要因を明らかにする。材料学的アプローチにおける、材料‐生体界面に及ぼす唾液の影響に関して、唾液中の接着阻害因子となる成分をXPSやEDSをはじめとする分析装置を駆使し同定する。同定された因子の唾液中濃度の個体差について吟味し,「唾液中蛋白質を検出することで接着結果の良否を予知できる可能性」について検討する。
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