今年度は、これまで継続発展させてきた「看護の質データベース」を継続させることと、参加病院の増加によるデータベースの制度確立を計画した。 約80の参加病院から四半期ごとの看護指標に基づくデータを収集し、データ処理をしてフィードバックする仕組みは確立され、滞りなく運用することができた。しかしながら、本研究と同時に始まった日本看護協会によるDiNQL事業が発展したため、新たな参加病院を得ることはできなかった。またすでに本データベースに参加している病院の中にもDiNQLに移行したい旨を伝えてきたものが複数みられた。 より大規模なデータベースをどのように構築すべきかについて、香港や台湾の看護協会に出向いた。両者とも、国家レベルの看護アウトカムデータを収集しており、地域(日本では都道府県レベルにあたる)にその担当者が専任でおかれていることがわかった。各病院は、それぞれの地域のネットワークを介してデータを提出し、ベンチマークしながら質向上に取り組んでいた。 DiNQLも、台湾や香港と同様に褥瘡発生率や転倒・転落発生率などを主とするアウトカムデータを収集している。患者への質保証の観点からすれば、アウトカムマネジメントは非常に重要であり、アウトカムの改善に取り組むのが昨今の主流でもある。 その上で、本研究がめざしてきたのは、アウトカムにつながる看護プロセスの可視化であった。看護師が実際に行うべき看護行為(プロセス)の数値化とベンチマークは、今後も必要なものである。参加病院が積極的に取り組むことのできるプロセス重視のベンチマークシステムの構築のためには、DiNQLなどの大規模事業との融合や、一定の地域に特化したモデル事業による効果検証の導入などが今後の課題と考える。
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