研究課題/領域番号 |
25257004
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
横山 智 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30363518)
|
研究分担者 |
中川 聡史 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10314460)
佐藤 廉也 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (20293938)
白川 千尋 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (60319994)
高橋 眞一 新潟産業大学, 経済学部, 教授 (80030683)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ラオス / 小規模社会集団 / 人口動態 / 再生産 / 生業 / 出稼ぎ / 地理学 / 人口学 |
研究実績の概要 |
本研究は、東南アジアのラオスにおいて、個人単位での出生・死亡・婚姻・移動・教育・再生産・経済収支などのデータ、さらに詳細な土地所有データを過去に遡って取得し、人口動態・再生産・生業に関する各要因間の相互関係を分析し、小規模社会集団の動態に影響している各種変数の相関を解明することを目的とするものである。 初年度(H25)は、具体的に4年間調査を実施する村落を決定するための事前調査を行い、水田水稲作を主業とする低地農村としてサワンナケート県ソンコン郡グッヒー村、そして焼畑陸稲作を主業とする山村としてサワンナケート郡セポン郡アランノイ村の2カ所を調査地として選定した。また、現地カウンターパート(サワンナケート県保健局)の調査員がタブレット端末を用いて住民へのインタビューを行うための調査フォーマット作成とその環境整備を行った。さらに、研究協力者の大学院生1名をアランノイ村に駐在させて、住民の日常生活と生活様式に関する基礎データを取得した。 これら現地調査で取得したデータは、国内会議を計3回実施して、メンバーで共有すると共に、今後の研究の方向性について議論を行い、H25から26年度の2年間は、低地農村のグッヒー村を中心に調査を進めることを決定した。 結果として、本年度は次の4つの研究成果が挙げられた。(1)調査対象となる2つの村落を決定し、両村における全住民の基礎データを取得した。(2)低地農村のグッヒー村では、多くの住民がタイに出稼ぎに行っていることが分かり、それが生業変化と再生産に大きな影響を与えていることが明らかになった。(3)山村のアランノイ村で焼畑を実施しているプロットをGPSを用いて測量し、空間データの経時変化を追うためのデータ構築を開始することができた。(4)高解像度衛星データを用いて、低地農村のグッヒー村の水田筆図を作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査地の選定、調査項目の決定、住民に関する基礎的データの構築、村落の空間データ(特に農地に関して)の作成などを行うことができた。これらは、H25に計画していた調査研究のほぼ全てを満たしている。 また調査地の一つとして選定した低地農村のグッヒー村では、タイへの出稼ぎ者が多いことが判明したが、H26年度以降の調査内容についても検討することができた。さらに、グッヒー村の水田筆図の作成およびアランノイ村での焼畑実施プロットの一の取得など、今後の調査に必要不可欠となる空間データの構築を終了させることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
事前調査によって、調査対象として決定した2村の全住民の基礎的データを得た。しかし、データの分析を実施したところ、特に人口動態や再生産に関して、理解できないデータが多くあることが判明した。ラオス農山村部では、住民登録の制度も徹底されていないため、公的なデータを参照することは不可能である。したがって、疑問に思うデータは何度も追加調査を実施して、データ精度を高める必要がある。また日本の国勢調査のような高精度なビッグ・データも存在しないので、対象村落の人口動態がラオスにおいて、どのように位置づけられるのかを、現地データと見定める必要もある。 今後は取得したデータの精度を高めていくための調査を行う。また、タイへの出稼ぎ者が多い低地農村のグッヒー村の住民を対象として、実際にラオスからタイに出稼ぎに出ている人へのインタビューを実施する。とりわけ、村の再生産と生業変化に対してタイに出稼ぎに出ることが、どのような影響を与えるのか、研究事例もなく、この調査研究が成功すれば、大きな成果が得られると考えられる。
|