研究課題/領域番号 |
25257005
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
湖中 真哉 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (30275101)
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研究分担者 |
波佐間 逸博 長崎大学, その他部局等, 准教授 (20547997)
松浦 直毅 静岡県立大学, 国際関係学部, 助教 (60527894)
内藤 直樹 徳島大学, その他の研究科, 准教授 (70467421)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ケニア / ウガンダ / アンゴラ / 牧畜社会 / 人道的支援 / 地域研究 / ローカライズ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、研究組織全体で、7月に静岡市において2日間にわたり第2回研究集会を開催し、8件の臨地調査による研究報告を行い、その後、討議を行った。その結果、おもに、下記の点が明らかになった。 1)複数の牧畜民の民族集団の国内避難民を対象とした物質文化の悉皆調査を実施した結果、「文化的に定められた最低限のもののセット」が各民族に存在する可能性がある。2)大旱魃の影響を受けた牧畜民の世帯に対して食糧援助が実施されたが、脆弱者を対象とした配給に対して、集落内で再分配が行なわれたことから、地域社会に存在するセーフティーネットとの齟齬が生じている。3)国家による強制的な武装解除が実施された地域では、牧畜民の病いは、暴力に抵抗する具体的な方法を創造する治療実践へと連なっており、身体の弱さや脆弱さが社会的な共生のソースとなっている。4)難民居住地では、配給物資と牧畜民の生活の間に齟齬が生じている。5)農耕民の難民は、避難先から新たな品種を入手して、生計手段を多様化している。 また、研究組織構成員は、それぞれの担当課題との関連において、ケニア、ウガンダ、アンゴラ、ガボン共和国等の牧畜民、農耕民、狩猟採集民を対象として、臨地調査を実施した。その結果、おもに下記の点が明らかになった。 1)一部の牧畜民の国内避難民は賃金労働者化しており、それによる環境破壊が進んでいる。2)旱魃被災地では、牧畜民が町の売店とつけ買い関係を結んでいるが、これらの売店は干ばつに対する予防・対応能力を有している。3)難民居住区では、ヘルスケアに拘わる自主的な組織が形成されつつある。3)農耕民の難民は緊急人道支援によって得た品種を従来の品種と組み合わせて受容している。4)狩猟採集民は、様々なリスクと直面しつつも、国際機関との連携によりネットワークを拡げようとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、第2回研究集会において、平成25年度に予め検討した課題にそって、各研究組織構成員が各地で実施した臨地調査成果を討議することができた。そして、その討議成果をフィードバックしながら、各研究組織構成員が平成26年度の臨地調査を実施し、各自の課題を深化させていくことができた。 それらの調査成果は、本研究の観点からみて極めて興味深いものである。その一部は、多くの口頭発表、出版物とともに、当科研プロジェクトのウェブサイトで既に速報しており、研究成果の公開という点でも順調に進んでいる。また、当初の計画通り、海外の研究者・実務家に向けて、英文ホームページを立ち上げることができた。 つまり、この科研プロジェクトの一連のサイクルが順調に回転しており、達成度は順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25・26年度は、臨地調査を中心として研究を推進してきたが、平成27年度以降は、それらの臨地調査成果を総括し、成果公開に向けて準備していくことを計画している。 まず、平成27年度は、12月に海外の研究者/実務家3名を招聘して、静岡市の国際会議場で、国際ワークショップ"Reconsidering the Basic Human Needs for the East African Pastoralists: Towards the Localization of Humanitarian Aids "を開催する予定である。また、一般公開形式の国際シンポジウム"What Can We Learn from Humanitarian Crisis?: A Dialogue between African Pastoralism and Shizuoka."を開催し、研究成果を一般市民に公開することにも努める。平成28年以降の口頭発表、出版についても打合せを進めていく。
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