研究課題/領域番号 |
25257011
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
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研究分担者 |
大村 幸弘 公益財団法人 中近東文化センター, 日本アナトリア考古学研究所, 所長 (10260142)
安間 拓巳 比治山大学, 現代文化学部, 准教授 (40263644)
槙林 啓介 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 准教授 (50403621)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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キーワード | 製鉄 / 起源 / 技術伝播 / 技術比較 / 国際研究者交流、インド、スリランカ / 国際情報交換、グルジア共和国 |
研究実績の概要 |
2014年度のフィールドワークはトルコ・カマンカレホユック、南シベリア・ハカス共和国、グルジア、中国四川省涼州彝続自治区で実施した。トルコでは、カマンカレホユックの前期青銅器時代(Ⅳ層)における金属生産関連遺物を検出でき、ハカス共和国では、次年度発掘予定のトルチェヤ遺跡(テシ文化あるいはタシティク文化)の調査地を選定した。四川省では中国において最南端となる製鉄関連資料を東坪遺跡で発見し、今後、発掘調査の実施について準備を開始した。グルジアについては研究協力者ブライアン・ギルモア氏(連合王国・オクスフォード大学)が担当し、グルジア北西部を踏査し、鉄滓等の散布地の存在に関する情報を得た。なお、研究協力者ルドミラ・カリャコーヴァ氏(ロシア・ウラル大学)を通じて、カザフスタン・カラガンダ大学が発掘調査したアラト遺跡において後期青銅器時代の製鉄関連資料が出土したという情報を受け、カラガンダ大学での資料調査を実施した。 なお本研究で南アジアのインド、スリランカを担当する研究協力者、ギリアン・ジュレフ氏(連合王国・エクセター大学)を前年度招聘する予定であったが、ジュレフ氏の本国での本務の都合上、招聘ができなかったため、今年度氏を改めて招聘し、目的を遂行した。ジュレフ氏の報告により、インドにおいては紀元前12世紀を遡る製鉄炉の発掘報告例があるものの、層位的に問題点が多く、年代の確証が得られない点、またスリランカでは自然風(モンスーン)を利用した製鉄技術の発展過程が追跡できることがわかった。報告後、大阪・国立民族学博物館で製鉄に関する民族資料を観察し、また日本の古代製鉄関連資料を見学し、インド、スリランカにおける製鉄技術との相違点に関して意見交換を行った。 なお最古級の製鉄が銅精錬炉の転用で行われたと想定し、岡山県新見市備中国たたら伝承会の実験場において復元実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題において中央アジアにおける古代製鉄研究はミッシングリンクであった。その中心的位置にあるカザフスタンにおいて後期青銅器時代の製鉄関連資料が発見され、それを実見し、さらには愛媛大学において調査できたことはきわめて有意義であり、ユーラシア大陸における製鉄技術の伝播について重要な所見を得ることができた。南シベリアにおけるフィールドワークでは、トルチェヤ遺跡がきわめて良好な状況で保存されていることが判明し、西方からの製鉄技術伝播を研究するうえで重要な遺跡であると判断できた。また西アジアに接するコーカサス地方についても、ブライアン・ギルモア氏がフィールドワークを開始することができ、着実に情報が収集されている。中国四川省最南端地域における製鉄関連資料の発見も技術伝播を知るうえで貴重な資料となった。さらにインドの製鉄研究の動向については2013年、奈良で開催された国際会議、BIMAⅧにおいて報告されていたが、データが不十分で、その詳細の検討ができない状態であった。その点、今年度のジュレフ氏の報告および意見交換において研究の現状がよく理解でき、データを収集すべき遺跡や機関についても有益な情報を得ることができた。 またカマンカレホユック出土鉄塊がきわめて小型であることから、製鉄炉内での生成環境について既往の初期製鉄に関する研究例をもとに技術復元の手がかりを得ることができ、現状で想定しうる当該時期の銅精錬炉を復元して、製鉄実験を行うことができた。 また愛媛大学において西アジアにおける製鉄研究の動向と製鉄技術復元について討論する場を設けることができ、世界最古級の製鉄技術に関する情報を整理し、公開することができた。
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今後の研究の推進方策 |
製鉄の起源地である西アジア地域についてはカマンカレホユックにおける製鉄関連資料を検出できたことから、自然科学的な分析を進める一方、研究分担者、研究協力者からの関連遺跡における調査状況を踏まえ、起源地における製鉄技術の様相を検討する。カザフスタンではアラト遺跡について現地調査を開始し、南シベリアではトルチェヤ遺跡を発掘調査し、各地での最古級の製鉄遺跡の様相を解明する。なおモンゴルにおいて発掘調査を進めるホスティン・ボラグ遺跡の成果について報告を求め、南シベリアとの関係について検討する。南アジア地域に関しては、引き続きジュレフ氏に担当を依頼し、情報の収集と、ジュレフ氏のチームによるスリランカの発掘調査成果について、2015年度、報告していただく。なお研究協力者、新田栄治氏が東南アジアにおける製鉄遺跡の研究動向を整理中であり、その報告を待って南アジアとの比較検討を行う。 現段階で、西アジア、 北アジア(モンゴル)、東南アジア、東アジアの研究成果がまとめられつつあり、2015年度は中央アジア、南シベリアにおけるフィールド調査の成果も得られる。これらの成果を各地の担当者が一堂に会して検討し、最終年度の研究に反映させることが必要と考える。
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