研究課題
基盤研究(A)
CERNのSPS加速器ビーム実験の供試体となるCALETの地上検証モデルについて、検出部のチャンネル数増設と、フライト品相当のフロントエンド回路への置き換えを実施する準備を行った。検出器前段に位置するCHD(電荷検出器)については、プラスチックシンチレータを光電子増倍管(PMT)で読み出す検出部が28セット必要である。これに対して、手持ちのセット数も考慮してプラスチックシンチレータを25本、PMTも25本を購入した。検出器中段のIMC(イメージングカロリメータ)のシンチファイバー検出部については、STM(構造熱モデル)が使用できる。また、シンチファイバー読み出し用の64チャンネルマルチアノードPMTの本数も加速器実験用には充分である。検出器後段のTASC(全吸収型カロリーメタ)については、検出部にPWOシンチレータを用いているが、ダミーとして用いている真鍮をできるだけPWOに置き換えるために、今回は10本を購入した。PWOを読み出すPD/APD(フォトダイオード/アバランシェフォトダイオード)は、今回購入した10本のPWOの他に手持ちのPWOの本数と今後の買い足し予定も考慮して25個を購入した。フライト品相当のフロントエンド回路については、今回は回路基板のみを製作した。CERNは平成25年2月のシャットダウンから約20カ月後の平成26年10~12月に陽子・電子ビームの利用が再開される。このマシンタイム申請は平成25年12月に公募されたが、陽子・電子ビームについてはある程度のデータが得られているので、平成27年2~3月に利用可能な重粒子ビームを用いた照射実験を優先することにして、陽子・電子ビームへのマシンタイム申請は見送り、今後公募される予定の重粒子ビームのマシンタイム申請をする方針である。
2: おおむね順調に進展している
CHD用のプラスチックシンチレータについては、読出しチャンネルの増設に必要な物品(ライトガイド付きプラスチックシンチレータ、メタルパッケージPMTなど)の購入が済み、今後は予定どおりにこれらを組み立てる作業に進む準備を整えることができた。TASC用のPWO購入では、その製造元である中国SICCAS社との交渉に時間を要した。CALETのフライト品PWOを製造する際は、その保持機構の関係でサイズ規定が特に厳しかったが、これを緩めることで価格を下げる交渉を行った。しかし、製造スケジュールの制約もあり、結局は、フライト品として製造したPWOの残りをSICCAS社が在庫品として保管していたものを購入することとした。この際も価格交渉がかなり難航し、予定数の12本をあきらめて10本の購入となった。CALETフライト品のエレクトロニクスの製造は担当メーカーにて当初8月頃に終了する予定であったが、これが半年以上遅れてしまった。これに合わせて本研究のスケジュールも調整が必要となった。地上検証モデル用のフロントエンド回路については、フライト品製造の終盤と並行する形で、メーカーに製造を依頼する予定であったが、フライト品の製造が遅れる中でメーカーに新たな負荷をかけることが困難な状況となった。結局、地上検証モデル用のフロントエンド回路の製造依頼を10月頃まで遅らせ、平成25年度は回路基板の製造のみを依頼することとした。このように、CALETフライト品の製造に合わせた多少のスケジュール調整は行わざるを得ないが、平成27年2~3月のCERN-SPSにおける重粒子ビーム実験に向けて地上検証モデルの増強・改修を順調に進めている。
電気的な性能と形状等がほぼフライト品相当のフロントエンド回路を製造することについては、できるだけ民生部品を活用することと、製造時における宇宙品としての検査を省くことによってコストダウンすることを目指した。しかし、それでも全ての回路基板をメーカーに依頼してリフローによる自動半田で製造してもらうのは予算的に厳しい状況であることが判明した。そこで、CERN-SPSにおいて平成27年2~3月に重粒子ビームでの照射実験を行うことを考慮して、平成26年度にはまずは重粒子の検出で主要な役割を果たすCHDについて、リフローによる回路基板の部品組上げをメーカーに依頼する予定である。IMC用基板とTASC用基板については、チャンネル数を限定することで全ての部品を組み上げずに部品点数を減らしたり、場合によっては研究者による手作業の半田付けによる部品組み上げも検討しなければならない。CHDの検出部については、完全にフライト品と同等品を組み上げることができるので、平成26年度の前半においてその作業を実施する予定である。TASCの検出部については、平成25年度の実験ではPWOを1層当りに3本を用いて組み上げたが、現在、PWOを全て抜いた状態にあるので、一からの組上げを1層当り4本に増設する作業として、これも平成26年度の前半に行う。その他、IMCも含めた地上検証モデルの再組み立てを10月頃までに行う。CERNでの重粒子ビーム照射実験に備えてシミュレーションによる性能解析も事前に進めておく予定である。
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