研究課題/領域番号 |
25257204
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 浩晃 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30301930)
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研究分担者 |
大園 真子 北海道大学, 理学研究院, 講師 (10623837)
宮町 宏樹 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (30182041)
谷岡 勇市郎 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40354526)
蓬田 清 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70230844)
吉澤 和範 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70344463)
中尾 茂 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (90237214)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地球・惑星内部構造 / テクトニクス / 地殻・マントル物質 / 事前現象観測・予測 / 国際協力 |
研究実績の概要 |
これまで蓄積された広帯域地震観測網の地震波形データを用い,新たに開発された観測点間位相速度推定法を利用して,日本列島からアジア北東地域にかけての広域的な上部マントル地震波構造の推定を行った.ロシアの観測点を利用することにより,日本海中北部の解像度が改善され詳細な構造が求められ,日本海盆の特に西側で顕著な低速度が見られることが明らかになった. 2011年東北地方太平洋沖地震後のロシア極東を含む広域GNSS観測網の座標時系列データを用いて,日本列島からアジア北東地域の粘弾性パラメータの推定を行った.中国東北部では余効変動が4cmに達しており地震時変動の倍となっている.推定された粘性率は5×10の17乗Pa s程度であった.この値を用いて,2020年までを外挿して推定したところ,更に数cmの変動が発生する可能性があり,その後も長期にわたって継続する可能性が示された.また,過去に日本列島周辺で発生した巨大地震による余効変動の推定も試み,アジア北東の広域に長期間の変動をもたらしてきた可能性が示唆された.これらの結果は,アジア北東地域で現在観測されている変動場に過去の巨大地震の影響が重畳している可能性が高いことを示し,プレートやブロック運動の検討時に考慮されるべき大きさをもつ可能性が明らかになった.つまり,当該地域のテクトニクスを考える場合には,時空間に変動するダイナミックなモデルを創成する必要がある. これら解析に用いるための広帯域地震・サハリン南部稠密地震観測・GNSS観測網のメンテナンスを引き続き実施しデータの蓄積を図った.アラスカで開催された北太平洋沈み込み帯シンポジウム等に参加し成果の発表を行ったほか,ロシア側研究者と今後の研究戦略について打ち合わせを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究でロシア極東地域に展開した広帯域地震観測網によるオリジナルなデータを利用し,高解像度な日本海下の地震波速度構造の推定に成功した.また,同様にオリジナルなGNSS観測網による座標時系列から,日本海下背弧の広域的な粘弾性構造が明らかにされた.このように,当初の計画された目標が達成されつつあることから,研究はおおむね順調に進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
独立に推定された,日本海下の上部マントルの地震波速度構造と粘弾性構造の情報を組み合わせ,観測データに立脚した統合された上部マントルの粘弾性パラメータの推定を進めることで,島弧海溝系のレオロジー構造を明らかにする.当該地域では,中国もGNSS観測網を展開していることから,今後は中国との協力体制が重要になってくると考えられる.また,余効変動は現在も続いていて,我々の結果からは今後10年スパン以上で継続することが見込まれることから,時空間的に異なる粘弾性パラメータ構造などを明らかにするためには,更に観測を継続することが必要である.
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