研究課題
北東アジア地域のIGS観測網のGNSSデータから2011年東北地方太平洋沖地震後の6年間の余効変動場を求めた.中国東北部・ロシア沿海州・韓半島に及ぶ広域的な余効変動は現在まで継続しており,2013年以降は減速しているようには見えない.今後,長期にわたり継続することが見込まれる.このデータを利用して,日本列島周辺の上部マントルの粘弾性構造を推定し,余効地殻変動の大陸側への影響を見積もった.粘弾性構造については,これまでの弾性層と粘弾性層による単純な二層構造を仮定した場合よりも,粘性の異なる粘弾性層を複数仮定した方が,余効変動の向きを良く説明できることが分かりった.この結果は,日本列島の島弧海溝系が複雑な粘弾性構造を有している可能性を示唆しており,観測されたデータの説明にはより現実的な構造の仮定・設定が必要であることを示す.今後,地震波トモグラフィーなどの他の物理量に基づく構造パラメータを利用した粘性構造の推定が重要となるであろう.本研究により,北東アジア地域の広域地殻変動場が,海溝で発生する巨大地震の影響を大きく受けていること,その影響は世紀を超えて長期間継続する可能性があることが明らかにされた.日本列島周辺では,2011年東北地方太平洋沖地震をはじめ,千島海溝・日本海溝・南海トラフにおいてM8を超える巨大歴史地震が度々発生している.現在アジア北東地域で観測されている地殻変動場には,これら過去の巨大地震の影響が広域的に畳み込まれており,広域的な地震活動の時空間変化にも関係している可能性もある.プレート境界での固着状況の推定など,地殻変動データを用いて地殻活動の評価を行う場合には,この遅れ変動の影響を補正することが必要であるが,その手法の開発は今後の課題である.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Pure and Applied Geophysics
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10.1007/s00024-018-1776-2
Journal of Seismology