研究課題/領域番号 |
25257206
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安田 一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80270792)
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研究分担者 |
藤尾 伸三 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (00242173)
柳本 大吾 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (40260517)
長澤 真樹 東京大学, 大気海洋研究所, 技術専門職員 (60447448)
西岡 純 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (90371533)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日露共同観測 / ブッソル海峡 / オホーツク海 / 乱流 / 鉛直混合 / 千島海峡部 / ロシア海域 / 深層循環 |
研究実績の概要 |
1)ロシア海域・亜寒帯域太平洋横断・道東親潮観測 2014年6月2日から7月8日にロシア・極東水文気象研究所(FERHRI)所属調査船マルタノフスキーを用いたロシア排他的経済水域・領海の日露共同観測を実施した。当初予定のロシア領海からは若干ずらすことにはなったが、千島ウルップ海峡での係留式多層流速計観測、ブッソル海峡での係留式多層流速観測および多層流速計・乱流計搭載グライダ観測、太平洋側における深層に至る観測を実施することができた。2014年7-8月には、海洋研究開発機構の北緯47度太平洋横断航海時のCTDに乱流計を取り付け、120キャスト以上の海底直上までの乱流観測を成功させた。さらに、2015年3月6-26日には白鳳丸KH-15-1航海において、冬季道東親潮海域における乱流計搭載水中グライダ、水塊・流速・鉛直混合観測を実施できた。 2)鉛直混合および鉛直循環評価手法の開発と北太平洋中深層データへの適用 自由落下型乱流計で従来から用いられているシアプローブと同時に測定した高速水温計による鉛直混合観測手法について研究を進め、水温勾配スペクトルに対して補正を行うことによって、水温データから乱流エネルギー散逸率を求めることが可能であることを明らかにした。さらに、CTDに取り付けた高速水温計データを用いる際には、水温勾配スペクトルのピークが不明瞭なデータおよびCTDの降下速度Wの変動が大きいデータを除去することによって、不良データを除けることを示した。密度逆転を用いた鉛直混合推定手法をブッソル海峡横断CTD観測に適用して鉛直混合強度を再評価して求めた等密度面を横切る流速から、オホーツク海側の厚い水塊がブッソル海峡を通過する際に、薄くなって太平洋側に流出するという、水塊分布と整合的であり、ブッソル海峡での鉛直混合の鉛直構造が太平洋側の海洋構造に大きな影響を与えるということを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ロシア政府に申請していた2014年6-7月のロシア船による観測は、当初の計画から寄港地がウラジオストクになり、霧の中で係留系回収に手間取るなどはあったものの、15年ぶりに海峡部での係留流速観測が実施でき、また、世界初となる乱流計・超音波流速計搭載水中グライダ観測が千島海峡部で実施できるなど、大成功で終了できた。海峡部での係留系観測は15年ぶり、太平洋側の観測も10年ぶりに観測が実施できるなど快挙である。さらに、2014年7-8月には、海洋研究開発機構の北緯47度太平洋横断航海時のCTDに乱流計を取り付け、120キャスト以上の海底直上までの乱流観測を成功させた。また、2015年3月6-26日には白鳳丸KH-15-1航海において、冬季道東親潮海域における乱流計搭載水中グライダ、水塊・流速・鉛直混合観測を実施できた。密度逆転を用いた鉛直混合評価手法を用いてブッソル海峡での鉛直混合分布を再評価し、海峡部を通過する水塊構造が大きく変化することに着目した研究成果など多数の論文を、オホーツク海特集号として国際誌のProgress in Oceanographyを編集して出版するなど、大きな成果を挙げた。鉛直混合評価については、CTD取り付け型乱流計の高速水温計観測について、補正や有効データの抽出手法の開発が大きく進展し、本科研費プロジェクトの計画を大きく上回る研究成果が上がりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度に実施した航海データを解析し、千島海峡部の大きな鉛直混合の分布とその発生機構を明らかにして、中深層循環・水塊分布への影響を明らかにして、とりまとめを行う。また、千島・カムチャッカ海溝に沿う表層から深層の海流と物質輸送を明らかにするとともに、過去の観測データとの比較を通じて、水塊や海流の長期変動と鉛直混合の関係を明らかにする。
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