研究課題
オマーンで採取した現生および中世温暖期の造礁サンゴ骨格の酸素・炭素同位体比および微量元素分析をおこなった。またインドネシア・ジャワ島で採取された中新世温暖期の化石シャコガイ殻の酸素・炭素同位体比分析をおこなった。オマーン湾に生息する現生のサンゴ骨格の酸素同位体比およびストロンチウム/カルシウム比から水温および海水の酸素同位体比の変化を復元した。その結果、温暖化によりインド洋の大気海洋循環が強化され、インド洋ダイポールモード現象の頻度を増大させていることが示唆された。この結果は現在、国際誌に投稿中である。さらに、現生サンゴでおこなった古環境指標のキャリブレーションの結果から、中世温暖期の気候を復元した。その結果、中世温暖期ではインド洋モンスーンが強化され、アラビア海の湧昇が強くなることが示唆された。現在と中世温暖期を比較すると、水温はほぼ同じであるが、中世温暖期の方が湧昇および水温の季節変動が大きいことがわかった。サンゴ骨格の成長量は中世温暖期および現生のサンゴよりも小氷期の方が大きく、温暖化がサンゴの骨格身長量を減少させている可能性を示唆した。中新世温暖期の試料としては、インドネシア・ジャワ島のシャコガイ殻を用いた。化石シャコガイ殻の酸素・炭素同位体比および殻の成長量を解析した。化石シャコガイからの酸素同位体比には明瞭な水温の季節変化が見られるが、生息環境の平均水温は30度近くになり、年間年間水温さも約2度と海洋の成層化が進行していたことがわかった。完新世温暖化オプティマムの同種の化石と殻の成長量を比較した結果、後期中新世温暖期のオオシャコガイの殻は約50%成長が小さく、より短命であったため、温暖期に石灰化が阻害されていた可能性がある。最終年度はこれまで得られた結果を集約し、各海域並びに各温暖化時代における気候変動と石灰化生物の応答について議論する。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度に引き続き、国際共同研究が強化されたことにより、当初計画していなかった海域、地域において新たに試料を得られることが可能になったため、得られた研究成果が当初計画していたよりも増えた。また、野外調査を丹念に続けた結果、同じ年代であってもシャコガイやサンゴ、そしてそれぞれの異なる種などの試料を得ることができ、複数のプロキシーで互いの結果の妥当性を検討することができたため、本研究の結果の信頼性を増すことができた。
本研究の成果は来年度、ドイツで開催される予定の国際ワークショップにてサンゴ骨格による古気候復元の研究者と共有し、本研究で得られた結果と他の研究機関で得られた成果と互いに比較し、研究課題の解明に向けて議論する。これまでに得られた成果は、国内外の学会で発表すると共に国際誌に論文を投稿する。また、公表された分析データを、データベース上にサンゴコア試料情報と併せて共有化するための準備を引き続き行う。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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