研究課題/領域番号 |
25257302
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (60217552)
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研究分担者 |
松山 明人 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, その他 (00393463)
内海 俊樹 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (20193881)
児玉谷 仁 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (30434468)
井村 隆介 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (40284864)
河野 百合子 鹿児島大学, その他部局等, 助教 (60582070)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水銀 / 金精錬活動 / 環境影響 / 国際研究者交流 / インドネシア / スロベニア |
研究実績の概要 |
6月にスロベニア共和国、イドリヤ旧水銀鉱山周辺において、旧製錬所を中心として、大気、河川水、土壌の採取行った。採取地点は、製錬所とその排気口のあるイドリヤ川右岸と、その対岸に設定した。土壌試料の採取にあたっては、柱状採泥器を用い7箇所で8本の柱状試料を採取するとともに2箇所では穴を掘り、土壌断面を確認するとともに、表層の落葉層を含めて堆積環境をできるだけ維持した形での試料採取を試みた。また、土壌採取点周辺の生葉も採取した。川岸の土壌で、最も高い2812 mg kg-1が確認されたが、山腹でも製錬所に近い地点の表層付近で1600 mg kg-1を超える値が観察された。旧製錬所から最も離れた約150 m 高い地点でも、80 mg kg-1を超える水銀を含む土壌が存在した。山腹で地点ごとに見ると、総水銀が高い程メチル水銀濃度も高くなる傾向が見られたが、メチル水銀は平均すると総水銀の0.03%程度、エチル水銀は検出された試料で総水銀の平均0.002%程度であった。 インドネシアでの調査は、8-9月、12月、3月に行った。8月は金精錬を行っている地域から約13 km上流にあたる国立公園内において、土壌、河川底質、水田土壌、タニシを採取するとともに、降水の採取を試み、その後金精錬地域に入り、同様に試料採取を行った。12月は、排出される水銀の影響範囲の調査を目的とし、金精錬活動地域を流れるチカニキ川沿いに精錬地域からさらに下流に向けて採取地点を設定し調査を実施した。河川水の水銀濃度は、下流に向けて低下する傾向が見られたが、底質は低下が水に比べて緩やかであり、水銀を含む粒子が下流に輸送されていることが示された。3月には、精錬小屋内の大気中水銀濃度の測定を行うとともに、作業小屋内放置水中溶存水銀濃度の変化を追跡した。また、精錬地域において、河川水中水銀濃度の定点観測を行い水銀の移動量を見積もることを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スロベニアでは、新しい採取点の設定により水銀の拡散状況をさらに広く評価する事ができた。また、水銀の存在化学形に対して情報を蓄積する事が出来ている。土壌・底質試料に関する水銀の化学形別分析法の信頼性評価について、データの解析を行い、その内容の一部を書籍としてまとめ出版する事ができた。さらにデータの解釈と整理をすすめ、学術誌への投稿を準備している。インドネシアでの調査でも河川を通じた水銀の拡散について調査範囲を広げたことで水銀の輸送挙動について新しい知見を得られた。これらの成果は国際学会での発表を行う予定である。また、3月にはパプア州において金採掘現場周辺での予備調査を実施した。金精錬を行っていないが、水銀濃度の高い底質も見出されており、金鉱山周辺に於けるバックグラウンドとしての水銀濃度を把握する事ができると期待できる。以上より、計画に沿って順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の調査によって得られた試料の分析を進める。また、あらたにパプア州に於ける金採掘現場周辺での試料採取を行い、水銀を使用しない金採掘現場における水銀濃度データの蓄積をはかる。また、西ジャワ州においては乾季に於ける水銀の輸送量を評価するために8月に調査を実施する。これにより、昨年3月の雨季のデータと合わせ季節変動も考慮に入れた評価を試みる。スロベニアにおいては、11月の調査を予定している。水銀鉱山周辺において、昨年5月に実施した調査では気温が30℃前後であった。今年度は気温の下がる11月の土壌中水銀化学形を調査することで、化学形変化における季節変動に関する知見が得られると期待している。これらの知見を合わせ、汚染地域に於ける水銀の挙動について総合的な解釈を試みる。
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