研究課題
基盤研究(A)
各調査研究領域において次の成果を得た。①整備活用・修復事例調査:バイヨンのバ・レリーフのモチーフの配置構成と物語的展開の特質をバ・プオーンの中段テラス楼門の壁面に施されているバ・レリーフおよびプレア・ピトゥ寺院の中央祠堂のリンテルの装飾を分析して、バイヨンのそれと比較を行い、バイヨンとバ・プオーンの一部関連性が認められた。②建造物修復材料の調査:バイヨン内回廊の石材劣化の重要な一因と考えられる砂岩積コーベルアーチからの漏水現況を確認し,回廊南面と西面の一部において屋根伏図・断面図として測量・図化した。その結果,屋根庇柱の外転びと不同沈下によって屋根が変形し,身舎屋根の小壁から庇屋根の張り出す部分において規則的に目地開きが生じていることが確認された。③保存修復薬剤の施工に関する調査:回廊の浮き彫り部分の撮影を行ない2006年データとの比較を行なった。その上で試験施工箇所を選定し、クリーニング、強化処理を行なった。これらのクリーニング、強化処理では様々な方法で行ない、効果的な方法を確立した。④浮き彫りのモニタリング調査:現状未整備なエリアとバイヨン寺院全体の振動の測定を行ない、砂岩の振動特性や観光客による振動集中スポットの把握を行なった。十字回廊・内回廊・外回廊において石材劣化の調査を行った。目視による劣化状態の調査を行うとともに、携帯型XRFを用いて劣化箇所における化学組成分析を行った。多くの場所において、劣化していない石材と比較してリン、硫黄、カルシウムが高い傾向が見られた。内回廊において、アンモニウムイオン及び硝酸イオン濃度を測定すると共に、15Nの取込みによる窒素固定の寄与を推定した。また、降雨時の屋根からの滴下水及び床面の雨水pHと硝酸イオン濃度を測定し、pH5.0以下の場合は硝酸イオン濃度が高い傾向が認められた。
2: おおむね順調に進展している
5月に体制の構築、調査研究内容の確認などに関する打ち合わせを行い、8月に現地(カンボジア王国・シェムリアップ)にて合同ミーティングを行なうことにより、円滑に進めることができた。保存処理試行においては現地整備事業の進行に影響され、施工ポイントの変更を行なったが当初予定していた強化剤の処置を終えることができるなど、その後はおおむね順調に進展している。
平成26年度の早い段階で撥水処理を行ない、保存処理工程を終了させ、その後これらの施工箇所が整備活用事業ならびに周辺環境の変化に対し、どのように対応するのか各種の評価手法を用いて継続的に調査を実施する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
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