研究課題/領域番号 |
25257303
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松井 敏也 筑波大学, 芸術系, 准教授 (60306074)
|
研究分担者 |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
中川 武 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (30063770)
池内 克史 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 名誉教授 (30282601)
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
下田 一太 筑波大学, 芸術系, 助教 (40386719) [辞退]
片山 葉子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90165415)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 保存科学 / 砂岩 / 修復材料 / バイヨン寺院 / 浮き彫り |
研究実績の概要 |
バイヨン寺院の劣化対策が地下水位の変動や雨水の処置と関係することから、航空測量による詳細な地形データを利用し、バイヨン寺院を中心に構える王都アンコールトムにおける水利構造の解明のための調査を行った。 クメール遺跡に用いられている建築材である砂岩、ラテライト並びにレンガ材の表面に見られる黒色化のうち、藍藻類の付着以外にマンガン酸化物の付着によるものが存在することを明らかにした。その形態等からこのマンガン酸化物はマンガン酸化細菌の活動によるものと考えられた。 バイヨン寺院の剥離劣化がコウモリ起源のアンモニアの微生物酸化による硝酸イオンであると考えられるが、その反応を担う微生物についての情報を得るために次世代シークエンサーによる菌叢解析を行ない、堆積物ではアーキアが行っている反応を壁面では細菌が進めていることを明らかにした。堆積物については複数の試料についてアンモニア酸化微生物の検索を機能遺伝子を対象に調査を行うことで環境との相関を明らかにした。模擬降雨実験を行い滴下水の分析結果からコウモリの影響を前年度に引き続き確認した。バイヨン寺院の浮き彫りの着生生物のモニタリング調査として、着生生物の消失等に着目して、生物調査を継続した。着生生物の除去法の開発として、8月と12月の2回に渡ってWHAT法による除去試験を予備的に行い、特に葉状地衣類に効果が見られた。 バイヨン寺院の壁面において強化撥水処置を行った箇所のモニタリングを実施し、処置12ヶ月後の反撥硬度を測定した結果、処置2ヶ月後と比較して変化はなく、効果は維持されていたことを確認した。2007年より曝露試験を継続している強化撥水試供体の経時変化を吸水率および反撥硬度、一軸圧縮強度により評価し、8年間の変化の勾配を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者ならびに分担者において研究が順調に進展している。 渡航に際しても問題なく、計画通り実施でき、調査時期の変更なども起きていない。 現地で実施される整備事業との調整も連携が取れており、浮彫試験施工に協力が得られた。 特に、保存処理剤の経年変化ではバラバラであった石材表面反発硬度が一様に強化され、均質な硬度になるなどその成果はこれまでの基本データによって裏付けられた通りとなるなど、効果を得ている。 微生物班、岩石班、計測班それぞれにおいても滞りなく、浮き彫り劣化に対するデータが集積できている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までの調査研究を継続させると同時に、平成28年度が最終年度となるため、これまでのデータの最終チェックを行い、補足調査を実施する。微生物班、岩石班、計測班それぞれにおいても滞りなく、浮き彫り劣化に対するデータが集積できており、さらに補足的データの収集に努める。 建造物の整備計画に沿った保存修復方法と評価方法の確立を行う。
|