研究課題/領域番号 |
25257307
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
山田 幸正 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10191347)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東南アジア / キリスト教 / 煉瓦造 / 木造架構 / RC造 / データベース / 保存 / 近代化 |
研究実績の概要 |
1)ブイチュ教区内に所在する歴史的教会堂の建築実測調査:ブイチュ教区内に所在する木造教会堂および煉瓦造もしくはコンクリート造を混用した煉瓦造教会堂の建築的な実態と様式・技法的な特徴を抽出するため、既存のDBのデータに基づき、建築様式・意匠的にみて重要と考えられる事例28件を選定し、2016年6月に予備調査と事前打合せを行った。それを踏まえ、8月中旬に、木造教会堂12件、煉瓦造教会堂4件、煉瓦造・RC造混用教会堂4件、その他(破却済み基壇のみ)2件の計22件について現地調査を実施した。そのうち木造教会堂6件、煉瓦造教会堂3件、煉瓦造・RC造混用教会堂2件の計11件の歴史的教会堂について、昨年度同様、フエ科学大学・トゥン准教授らの調査協力を得て、建築実測調査を行った。 2)ベトナム北部カトリック・キリスト教祭礼に関する調査:キリスト教最大の祭礼であるクリスマスにかかわる信者らの祝祭行事と特別ミサについて、ブイチュ教区司教座大聖堂であるブイチュ大聖堂と聖堂としてはそれより大規模なフーニャイ教会堂、それらの周辺地区において、クリスマスイブおよびクリスマス当日に取材調査した。 3)調査報告と補充調査:2017年3月に調査済みの教会に対し、調査成果の報告を兼ねて補充調査を実施した。その際、現地調査などに基づくA2版ポスターを作製・持参し、地元関係者や信者らに教会堂保存への関心を喚起するため、調査対象の教会堂に展示していただくよう寄贈し、あわせて建築保存への理解と関心を醸成するよう意見交換会などを開催した。 4)論文等発表:これまでの調査研究の成果に基づき、2016年8月に日本建築学会大会に3篇の論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブイチュ教区およびファットジェム教区との間で交わした調査協力に関する覚書に基づき、ブイチュ教区では平成25年度と平成28年度で計39件、一方、ファットジェム教区では平成26年度と27年度で計24件、総計63件の歴史的教会堂の実測調査を終えることができた。とくに昨年度夏期調査は一連の実測調査としては最後となる見込みで、RC造の導入期である1930年代以降の大規模な教会堂としてフーニャイ教会はじめ2件、建設年代が古い、あるいは規模が大きい木造教会堂6件など、これまでの調査を補完する目的で実施した。また両教区に対して調査成果の還元も継続して行っており、歴史的教会堂の保存に対する信者らの関心も高まりつつある。また、昨年度のファットジェム大聖堂に引き続き、キリスト教最大の祭礼であるクリスマスに関連した特別ミサや信者らの祝宴行事などについて、ブイチュ大聖堂およびフーニャイ教会において取材調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ブイチュ教区およびファットジェム教区において、平成25年度以降これまでに実施した実測調査などの成果を踏まえ、最終年にあたる平成29年度は、フエ科学大学およびフエ外国語大学などの協力を得て、中部フエにおいて、本研究の総括のための研究集会を企画する。あわせて、ブイチュ教区およびファットジェム教区に対して、これまで蓄積してきた図面、写真、文書、収集資料などをはじめ、データベースに収めたすべての情報を、データベースの運用および管理のシステムとともに、移管・譲渡する予定であり、そのための調査報告会ならびにデータベース運用講習会を現地にて開催する予定である。現地の教会側の神父や信者らが自ら当該データベースを自主管理・運営することによって、今後、歴史的教会堂の保存と活用、さらに伝統的キリスト文化の保持・発展に結びつくことが期待される。また、これまでに得られた知見を取りまとめて、建築学会等で発表するとともに、報告書の作成をめざす。
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