研究課題/領域番号 |
25257308
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中川 武 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (30063770)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文化遺産 / 保存活用 / ベトナム / 持続的発展 / 人材養成 / 国際協力 / 技術移転 |
研究実績の概要 |
1.文化財修復技術:引き続き、文化財建造物の修復詳細技術に関し、より一層精度を高め、カウンターパートへの適確な技術移転を推進するために、フエにおける第一級の上流住宅であり、危機に瀕していて、救済の手が必要とされている「延福長公主祠」の部分解体調査を日本人専門家とベトナム人修復技術者の共同のもとに行い、ジョブ・トレーニングの機会とした.部分解体調査の結果をもとに既に実測した阮朝小宮殿と比較分析を行い、一定の成果を得た. 2.保存科学:前年度調査により、雨漏りの溜水による木造軸部の腐朽、さらに敷地に広く庭を構えて様々な種類の木を植えたことによって蟻害の受けやすい環境について現地での調査をもって確認した.今年度は、これをもとに、現地での保存科学手法について、ガイドラインおよびマニュアルを作成を行った. 3.災害リスク軽減:現地カウンターパートと、地形分析・水系解析に資するDTM測量調査の必要性について協議を行った. 4.文化的景観保全:現在は、祠堂として残る、府第(皇子・皇女の住宅)について、悉皆的に調査を行い、史書との照会により、その分布・残存状況を地図上にまとめた.また、爵位等序列や親等序列と建物の規模の関係について試論的考察を行った. 5.公教育:「延福長公主祠」のあるキムロン地区は、阮朝期以前からの由緒ある土地柄、伝統的木造家屋が比較的多く残る地域となっている.それらは、現地の言葉で「庭の家」と呼ばれるように、敷地に広く庭を構えて、様々な種類の木を植える.これらの歴史文化資源の重要性について、現地との共有し、今後の利活用について検討を行った. 6.持続可能な観光:残存する上流住宅、フランス植民地時代の建物について、詳細な実測調査と、史料調査により、これらの歴史的評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究において設定した「技術支援」「意味づけ」「マネジメント計画」という3つの基軸的なスキームの下位項目である「文化財修復技術」「災害リスク軽減」「文化的景観保全」「持続可能な観光」「公教育」の5項目において、関係する機関との協議を行い、当該研究の意義および目標を共有した.特に緊急性の高い課題である文化財建造物の修復技術については、継続的な技術移転を進めた.これにより「災害リスク軽減」「文化的景観保全」「持続可能な観光」「公教育」といった、地域の歴史的資源(文化財)の今後に関する取り組みへと歩を進めることが可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
「延福長公主祠」のあるキムロン地区は、阮朝期以前からの由緒ある土地柄、伝統的木造家屋が比較的多く残る地域となっている.それらは、現地の言葉で「庭の家」と呼ばれるように、敷地に広く庭を構えて、様々な種類の木を植える.これらの歴史文化資源の重要性について、現地との共有し、今後の利活用について検討を行った結果、当該研究で設定した「文化財修復技術」「保存科学」「災害リスク軽減」「文化的景観保全」「持続可能な観光」「公教育」の研究6項目を横断的に連関させるべく、地域住民の参加を促進するワークショップの開催の必要性が高まった.
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