研究課題/領域番号 |
25257401
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平野 高司 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20208838)
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研究分担者 |
山田 浩之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10374620)
都築 勇人 愛媛大学, 農学部, 准教授 (70363257)
甲山 治 京都大学, 東南アジア研究所, 准教授 (70402089)
伊藤 雅之 京都大学, 東南アジア研究所, 助教 (70456820)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境変動 / 炭素循環 / 人為撹乱 / フラックス観測 / 水循環 |
研究実績の概要 |
サブテーマ1(タワー観測)では、インドネシア・リアウ州の劣化した泥炭地において降水量、水位、土壌水分などの水文・気象観測とボーエン比法を用いたフラックス観測を行った。観測データを用いて火災発生時の水文気象条件を解析した結果、平成26年2月の火災時には月降水量が4 mmと少なく、表層の土壌水分が体積含水量で0.05、地下水位は-150 cmを下回ったことが分かった。また北東季節風が強く、火災の延焼を広げたことが分かった。さらに衛星画像を用いて火災発生時期と場所を特定した。西カリマンタン州クブラヤ県のアカシア植林地にCO2/H2Oフラックスタワーを平成26年10月に設置し、観測を開始した。 サブテーマ2(泥炭分解)では、パランカラヤにおけるCO2放出量は年平均で1.21~1.43 μmol m-2 s-1と求まった。サラワクのオイルパーム園についても土壌からのCO2放出量を継続調査した。この他、新たに中部カリマンタン州のゴム園(平成26年6月)に「根切区」と「対照区」を設置して同様の測定を開始した。パランカラヤでは3つのサイト各地に深さ45-70 cmの土壌断面を作成し、10 cm深度毎に泥炭試料を採取して炭素窒素含有量等を測定した。また、中部カリマンタン州およびリアウ州にて、森林伐採や火災前後の泥炭地下水中の溶存態有機炭素(DOC)の動態を調査した。DOC濃度・3次元蛍光法及び2次元核磁気共鳴(NMR)解析により、火災等の環境変化がDOCの質・量ともに影響を与えることが明らかになった。 サブテーマ3(炭素循環)では、パランカラヤでの悉皆直径調査を反復し、期首と期末のバイオマスの差から植生の成長量(生産量、回復速度とも言い換えられる)を明らかにした。またリタートラップを継続調査している。 サブテーマ4(生態系モデル)では,推定精度の向上に向けてフィールドデータを活用した熱帯泥炭生態系サブモデルの検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ST1では、インドネシアの中部カリマンタンおよびマレーシアのサラワクにおけるフラックス観測を継続しながら、インドネシアの西カリマンタンで新たにフラックス測定を開始し、ネットワーク体制の充実と連携を進めている。これらデータ蓄積と合わせ、炭素収支や気候、土地利用、環境攪乱(排水、火災など)の影響等について解析を進めている。 ST2では、中部カリマタン(ジャビレン)に新たな調査区を設置し、パランカラヤおよびサラワクでの継続測定と合わせて、多様な熱帯泥炭の土地利用についてCO2放出量のデータを収集・蓄積できる体制を整備してきた。パランカラヤについては1年を超えるデータ蓄積となり、変化する環境要因(地下水位や地温)との関係性の解析を進めている状況にある。 ST3では、相対性長則の確立に向けて地上部および地下部にある根のバイオマス量を調査し、その精度向上を目指す追加調査を計画する段階に至っている。 ST4は熱帯泥炭生態系サブモデルの検証を行っており,予測精度が向上するものと期待できる。 パランカラヤでは平成26年9月に大規模な森林火災が生じ、排水後に焼失した後の再生林(DB)で一部のデータが欠測する事態が生じた。しかし、平成26年12月に測定環境を復旧し、データ収集体制を再開させている。以上の通り、いずれのサブテーマも当初の計画に沿って活動が進められており、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
ST1では、観測を継続してデータの蓄積を進めるとともに、土地利用変化と気候変動の影響を統合的に解析する。 ST2では、これまでに設置した全てのサイトにおいて継続調査を行い、得られたCO2放出量と変化する環境要因(地下水位や地温、土壌水分量)との関係性を明らかにする。サラワク州ではすでに調査しているオイルパーム園に加え、未排水の自然林および2次林についても自動開閉チャンバーシステムを設置して泥炭の分解量を測定する予定であり、その一部は平成27年5月に実施する計画である。今年度、中部カリマンタン州およびリアウ州で溶存態有機炭素(DOC)の動態に関して調査したが、今後はこの経時的な変化について調査を進める。 ST3では、部位別の炭素の蓄積や生産量などの生態的特性を、より長期のデータに基づいた一般的な値とするため、調査を継続する。その調査の結果を、微気象観測に基づく手法の結果と突き合せ、さらに類似植生を対象とした既存の成果と比較し、開発により劣化した熱帯泥炭林の炭素の蓄積と変化量の理解を進める。 ST4では、フィールドデータを用いたサブモデルの検証を継続するとともに、広域化のためのデータインタフェースの検討を行う。
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