研究課題/領域番号 |
25257401
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平野 高司 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20208838)
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研究分担者 |
山田 浩之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10374620)
都築 勇人 愛媛大学, 農学部, 准教授 (70363257)
甲山 治 京都大学, 東南アジア研究所, 准教授 (70402089)
伊藤 雅之 京都大学, 東南アジア研究所, 助教 (70456820)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / メタン / 温室効果 / 温暖化 / 環境撹乱 / 東南アジア / 土壌炭素 |
研究実績の概要 |
サブテーマ1(タワー観測)では,インドネシア・中部カリマンタン州の撹乱の程度の異なる3つの泥炭生態系(森林2ヵ所と森林の火災跡地)においてCO2とエネルギーフラックスの観測を継続するとともに,1つのサイト(未排水の森林サイト)にCH4分析計を設置し,メタンフラックスの観測を始めた。また,インドネシア・リアウ州の劣化した泥炭地(エネルギーフラックスのみ),西カリマンタン州のアカシア植林地およびマレーシア・サラワク州の3サイト(オイルパーム園,自然林2ヵ所)においてそれぞれ観測を継続した。中部カリマンタン州の観測からは,森林の火災跡地で正味のCO2の吸収速度が増加するという結果が示唆されており,植生変化との関係を解析中である。 サブテーマ2(泥炭分解)では,中部カリマンタン州の3つの泥炭生態系とゴム園において,泥炭土壌の根切り処理を行い,泥炭の好気的分解にともなうCO2発生量の観測を行った。ゴム園の結果から,土壌CO2フラックス(土壌呼吸)の年間値に占める泥炭分解と根呼吸の寄与が,それぞれ46,54%であることが示された。また,年間の地盤沈下量に対する泥炭分解の寄与が38%であることが示唆された。 サブテーマ3(炭素循環)では,中部カリマンタン州の排水や火災によって劣化度の異なる3植生に設置した固定プロットの悉皆直径調査の反復により,調査時点間のバイオマスの差として植生の成長量(生産量,回復速度とも言い換えられる)が,またリタートラップ調査により月々の落枝落葉量が明らかとなった。 サブテーマ4(生態系モデル)では,推定精度の向上を目指して,フィールドデータを活用したサブモデルの検証を行うとともに,広域化のためのデータインターフェースの検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマ1では,インドネシアの中部カリマンタン州(3サイト),西カリマンタン州(1サイト)およびマレーシアのサラワク州(3サイト)におけるフラックス観測を継続しながら,観測ネットワークの充実に努めてきた。各サイトで,CO2フラックスの様々な環境要因の変動に対する応答特性の解析を行うとともに,ネットワークを活かした統合的解析を進めつつある。 サブテーマ2では,中部カリマンタン州(4サイト)とサラワク州(3サイト)において泥炭の好気的分解にともなうCO2放出速度の観測を継続するとともに,地盤沈下量のデータの蓄積も進めている。各地点のデータから,泥炭分解の季節変化,地下水位との関係を解析している。また,メタンフラックスの観測データの蓄積が進んでいる。さらに,中部カリマンタン州とリアウ州では,森林伐採や火災前後の泥炭地下水中の溶存態有機炭素(DOC)の動態に関する調査を行い,その解析を進めた。 サブテーマ3では,初年度に劣化度の異なる3植生に固定試験地を設置し,以後,試験地の立木直径調査と落枝落葉調査を継続し,調査時点のバイオマスや成長量を明らかにしてきた。 サブテーマ4では,実測データを活用して,陸域生態系モデルにおける熱帯泥炭サブモデルの開発と検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1では,タワー観測を継続してデータの蓄積を進めるとともに,土地利用と気候変動が熱帯泥炭地の炭素動態に与える影響を統合的に解析する。また,観測データをサブテーマ4に提供する。 サブテーマ2では,サラワク州の3サイトにおいて泥炭の好気的分解にともなうCO2フラックスの観測を継続する。また,メタンフラックスの観測データの蓄積を行う。得られたデータを統合的に解析し,泥炭分解およびメタンフラックスと土地利用や水文環境(地下水位など)との関係を明らかにし,IPCCが提案している排出係数の改良と精緻化を試みる。 サブテーマ3では,森林の炭素蓄積や生産量などの生態的特性を継続して調査する。その結果をタワー観測に基づく手法の結果と突き合せ,さらに類似植生を対象とした既存の成果と比較し,開発により劣化した熱帯泥炭林の炭素の蓄積と変化量を明らかにする。 サブテーマ4では,熱帯泥炭生態系に対応したサブモデルを完成し,炭素動態の環境応答をシミュレートする。
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