研究課題
熱帯アジアでは、人間生活・畜産などの排水流入と洪水により水環境が撹乱され、種々の起源から薬剤耐性菌・遺伝子の混合が起こる。本研究は、こうした環境下で耐性遺伝子と薬剤の汚染実態をモニタリングし、水環境における耐性遺伝子の環境中残存と伝播の実態を解明することを目的とする。平成27年度は、南部ツンソン周辺の養豚鶏場およびその排水が流入する河川を調査した。概要は次のとおりである。1)バンコクではマクロライド系抗生物質の寄与が大きかったが、ツンソンでは低濃度であった。一方、養豚場排水では、総濃度は560-24800ng/Lと高く、リンコマイシン、クロロテトラサイクリンの寄与が大きい特徴があった。河川と汽水域では総濃度が50ng/L以下と比較的低く、薬剤種はオキシテトラサイクリンが比較的高いが(10-50ng/L)、地点によって多様な薬剤が検出された。これまでの熱帯アジアの畜産排水では、サルファ剤系が主要であったが、タイ南部では使用薬剤が他地域とは異なっていた。2)腸内細菌の解析では、養豚鶏場排水及び河川水から合計119株を分離した。そのうち、27%がセファゾリン耐性だった。セファゾリン耐性株は養豚場で高率に分離された。保有プラスミド解析の結果、養豚場排水及び河川水両方で、多様な耐性遺伝子型(bla型)を保有する株があり、レプリコン型も多様だった。このことから、多様なセファゾリン耐性遺伝子が広く水圏の腸内細菌科に分布することが分かった。環境細菌では、テトラサイクリン耐性率は10%以下と低く、サルファ剤とエリスロマイシン耐性菌率は河川と養豚場で30~40%であった。3)sulとtet(M)の定量では、sul2が1.0E-3~0(0.1~100%の環境菌が保有)と極めて高かった。これまで検出例が少ないsul3が汽水域を除く河川と養豚場で1.0E-3以上検出され、この地域の特徴であった。
1: 当初の計画以上に進展している
3度目の調査を無事終了し、1~2年度目の成果を論文発表した。学会発表、シンポジウム招聘発表等で社会発信も活発に行った。
最終年度には、タイのカウンターパートを日本に招聘し、総括的フォーラムを行う。これまでの結果を踏まえて、さらに本プロジェクトの継続発展を計画しているので、その具体化を図る。成果の論文発表を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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