本研究課題では、環境の異なる様々な海域において海産緑色藻類に関する学術調査を行い、系統関係を考慮しながら主として雌雄の配偶子のサイズを中心とした種間形質を比較することによって、おもにアオサ藻綱の海産緑色藻類に見られる多様な配偶システムが進化した適応放散の過程を検証する。これまでに、現生の海産緑藻類に見られる同型配偶には、極めて小型で両性で走光性器官を持たない配偶子同士の同型配偶と、より大型で両性が走光性器官を有する配偶子同士の同型配偶の2つのタイプがあることが明らかになっている。これまで現生の海産緑藻に見られる同型配偶は最も祖先的な形質であると考えられてきたが、これに2つのタイプがあるとするとこの従来の仮定を根底から揺るがす。平成29年度は、研究計画に従って、アオサ藻綱の海産緑色藻類のなかでも、これまでの研究によって精度の高い分子系統解析が可能となったハネモ目においてこれまでに行った研究を補完するデータの収集を続けるとともにより同型配偶に近いグループについての最終の学術調査を行った。ハネモ目を構成する種では配偶システムに幅広い多様性が見られる。これまでの研究では、卵配偶を含めて異型配偶を行っているグループの配偶システムにおいては、雌性配偶子のサイズのみが重要であるように見られがちであったが、雄性配偶子は小型であるがゆえにわずかなサイズの変異も配偶子の異型性の度合いに大きな影響を与える可能性があると考えた。研究の結果、最小の雄性配偶子のサイズが明らかになった。野外調査は、(研究分担者 吉村、四ツ倉)の支援を受けながら、おもに北米大陸東海岸を南下しながら研究代表者(富樫)が中心になって行い、最南端の米国・フロリダ州のメキシコ湾沿岸に到達した。
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