研究課題/領域番号 |
25257415
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研究種目 |
基盤研究(A)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
今内 覚 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40396304)
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研究分担者 |
大橋 和彦 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (90250498)
村田 史郎 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (10579163)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 疾患抵抗性 / 在来種家畜 / サイトカインストーム / 免疫抑制 / ヨーネ病 / 牛結核 / ダニ媒介性疾患 / 牛白血病 |
研究概要 |
アフリカ大陸、アジア、南米などに生息する在来種家畜や野生動物は、種々の疾病に対して抵抗性を示す。これまでの本研究により、外来種家畜が致死的である原虫やウイルスに感染しても在来種家畜や野生動物はサイトカインストームを起こさず無症状であることが明らかとなった。今年度は牛難治性疾病の病態解明を目的に、フィリピン共和国において牛難治性疾病の分子疫学調査を実施し、在来種家畜や外来種牛の免疫学的解析を行った。疫学調査の結果、フィリピン国内では、日本では法定伝染病に指定されている悪性伝染病(牛結核、ヨーネ病、バベシア病、タイレリア病、アナプラズマ病)が蔓延していることが明らかとなった。ヨーネ病については、本調査によりフィリピン国内で初めて感染牛の存在が確認された。野外調査の成績より悪性伝染病罹患牛から採材を行い、リンパ球上の免疫抑制因子Programmed death-1 (PD-1)、Programmed death-ligand1 (PD-L1) の発現量をフローサイトメトリー(FACS)により解析した結果、結核罹患ウシのCD4+T細胞において、PD-1の発現量が増加していることが初めて明らかになった。結核罹患ウシ由来のリンパ球に抗PD-1抗体を添加して培養した結果、IFN-γの産生回復効果が認められ、本法が細胞性免疫の賦活効果を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本国内では法定伝染病であるため解析が極めて困難な牛の悪性伝染病の免疫学的解析を行い、病態発症機序に関する新たな知見を得ることに成功した。また免疫抑制因子に対する複数の抗体を同時に添加すると、さらに細胞性免疫が増強され、より強い抗病原体効果が発揮されることが明らかになった。このことから、本法は牛難治性疾病の新規疾病制御法になりうると考察された。一方で、有意な差が認められなかったバベシア病やアナプラズマ病などについては更に解析を進める必要があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今回実施したフィリピンカラバオセンターとの共同研究から、ヒトやマウスモデルと同様に牛結核やヨーネ病においてもPD-1などの免疫抑制因子が病態進行へ関与することが示唆された。一方で免疫抑制因子を分子標的とした機能試験より、抗PD-1抗体を添加することで細胞性免疫が賦活されることが確認され、本法が家畜悪性伝染病に対しても新規制御法となりうる基礎的知見を得た。今後も共同研究を進め詳細な解析を行うとともに現地で臨床試験を実施し、生体での効果について検討したい。
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