研究課題
アフリカ大陸、アジア、南米などに生息する在来種家畜や野生動物は、種々の疾病に対して抵抗性を示す。これまでの本研究により、外来種家畜が致死的である原虫やウイルスに感染しても在来種家畜や野生動物はサイトカインストームを起こさず無症状であることが明らかとなった。今年度は牛難治性疾病の病態解明を目的に、2014年7月24日~8月8日の間、モンゴル国において分子疫学調査を実施した。その結果、日本では監視伝染病に指定されている牛白血病、ヨーネ病、牛ウイルス性下痢症の存在が、本調査により始めて確認された。各起因病原体の陽性率は、牛白血病ウイルス(3.9%: 517頭中20頭陽性)、牛ウイルス性下痢症ウイルス(5.5%: 110頭中6頭陽性)およびMycobacterium avium subspecies paratuberculosis (0.8%: 356頭中3頭陽性)であった。牛白血病ウイルスについては、ロシアで分離されているウイルスと相同性が高かった。しかし、在来家畜(モンゴル土着牛やヤク)においては、感染後の臨床症状が認められなかったことから病原体および宿主双方の詳細な解析が必要であると考えられた。Trypanosoma evansiによって引き起こされるスーラ病は、フィリピン共和国においては感染症の中で2番目に被害が大きいが、病態発生機序は不明である。そこでフィリピン共和国内で分離したTrypanosoma evansi原虫強毒株をウシ(ホルスタイン種)に接種し、免疫応答について解析した。その結果、スーラ病における炎症病態の発生には制御性樹状細胞が関与し、その制御にはCCL8およびIL-10が重要であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
日本国内では、解析が極めて困難なウシの悪性伝染病の免疫学的解析を行い、病態発症機序に関する新たな知見を得ることができている。これらの知見を新規疾病制御法として応用し、その効果について生体内で評価することが重要である。今後は実験感染などを行い再現性を確認するとともに、さらに詳細な解析を行う応用研究を展開したい。
今年度実施したモンゴル国での研究調査から、在来種家畜が疾病抵抗性を示すことが明らかとなった。モンゴル国内で流行する病原体の情報は極めて乏しいことから分離病原体の遺伝子解析を行う一方、在来種家畜の感染免疫応答について解析を進める。フィリピン共和国の在来種家畜においてもアナプラズマ症、ヨーネ病等、種々の疾病に対する抵抗性が確認されている。現在、これらの家畜の免疫制御因子の同定を行っている。得られた情報を基に、H27年度はアナプラズマ症の起因病原体であるAnaplasma marginaleおよびヨーネ病菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)の感染実験を行い、免疫応答の詳細について解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 19件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (32件) (うち招待講演 17件) 図書 (2件)
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