研究課題
アフリカ大陸、アジア、南米などに生息する在来種家畜や野生動物は、種々の疾病に対して抵抗性を示す。これまでの本研究により、外来種家畜が致死的である原虫やウイルスに感染しても在来種家畜や野生動物はサイトカインストームを起こさず無症状であることが明らかとなった。2014年度にモンゴル国において行った分子疫学調査から得られた試料を用いて詳細な解析を行った結果、ウシ白血病ウイルスはロシア株に極めて近縁であることが確認された。ウシウイルス性下痢症ウイルスについては、1型および2型と同定され、モンゴル固有の1aおよび2a型の2種類の遺伝子亜型が流行していることが明らかとなった。アナプラズマ病においては、ウシ、ヤク、ヒツジおよびヤギにおいて高率でAnaplasma ovisに感染していること、また新規のAnaplasma属が感染していることも判明した。今後これらの病原性について解析する予定である。また同国で今回初めて確認されたヨーネ病については菌分離を計画中である。在来家畜(モンゴル土着牛やヤク)は、種々の病原体に感染しているにも関わらず臨床症状が認められなかった。そこで各種サイトカインおよび免疫制御因子の遺伝子多型解析を行っている。2014年度は難治性疾病であるヨーネ病、アナプラズマ病、東海岸熱および牛白血病の感染実験を行った。このうち細胞性免疫の低下を示すヨーネ菌持続感染牛は、免疫抑制因子が腸間膜リンパ節のCD8+ T細胞および末梢血中のCD4+とCD8+ T細胞において発現量が上昇していること、ヨーネ菌感染マクロファージにおいて、免疫抑制因子のリガンドが発現亢進していることが明らかとなり、ヨーネ病の病態発症機序にはヨーネ菌特異的T細胞の疲弊化が関与していることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
日本国内では、解析が極めて困難なウシの悪性伝染病の免疫学的解析を行い、病態発症機序に関する新たな知見を得ることができている。これらの知見を新規疾病制御法として応用し、その効果について生体内で評価することが重要である。今後も実験感染などを行い、再現性を確認するとともに、さらに詳細な解析を行う応用研究を展開したい。
これまで実施したモンゴル国での研究調査から、在来種家畜が疾病抵抗性を示すことが明らかとなった。モンゴル国内で流行する病原体の情報は極めて乏しいことから分離病原体の遺伝子解析を行う一方、在来種家畜の感染免疫応答についても解析を進める。最終年度のH28は、現在実施中のアナプラズマ病の起因病原体であるAnaplasma marginaleおよびヨーネ病菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)の感染実験を継続し、免疫応答の詳細について解析を進め病態発生機序について明らかにする。また、これまで得られた情報を基に新規治療薬を開発し、日本国内では感染実験が極めて困難なアナプラズマ病やヨーネ病等を重複感染している家畜を対象に臨床応用試験をフィリピン共和国で実施したい。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (23件) (うち国際共著 11件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 20件、 謝辞記載あり 10件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 5件、 招待講演 18件) 備考 (1件)
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