研究課題/領域番号 |
25257501
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 大智 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (00346579)
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研究分担者 |
三森 龍之 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (00117384)
上里 博 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10137721)
久保 誠 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40464804)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リーシュマニア / サシチョウバエ / 疫学 / 診断 |
研究実績の概要 |
本研究では、新たな広がりを見せるリーシュマニア症の伝播機構や病態の解明を目指し、独自の研究材料を活用して“感染・病態リスク評価システム”を構築し、疫学調査を行うことを目的とする。 本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)FTAカードに塗布した検体を鋳型に用いてLAMP法によりリーシュマニア原虫遺伝子を1時間以内に検出する分子診断法(FTA-LAMP)の確立に成功した。2)非定型の皮膚型リーシュマニア症、汎発型と播種型の症例を報告し、それぞれの病態の相違について比較検討を行った。3)我々が確立したマススクリーニング法を用いて、ペルーで流行するハイブリット型のリーシュマニア原虫を媒介するサシチョウバエ種を明らかにした。4)PCR法を用いたリーシュマニア原虫の分子診断の有用性について比較検討した。5)ペルーのリーシュマニア症流行地域において、分布原虫種を簡便に同定することができるPCR-RFLP法を確立し、現地で保管されていたスライド標本を用いて、現在の流行状況について明らかにした。6)エクアドルにおいて、これまで報告されていないリーシュマニア原虫種が分布していることを明らかにした。7)エクアドルに分布するリーシュマニア原虫の広域調査を行い、どの地域にどのような原虫種が分布しているのかを明らかにした。8)病態リスクファクターとなりうるリーシュマニアRNAウイルス(LRV)の検出系を確立し、感染者から採取した原虫での感染を調査した。9)タイの感染者から分離されたリーシュマニア原虫種の組換え抗原タンパクを作製し、簡易血清診断法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度の調査では、臨床症状を悪化させることが示唆されているハイブリッド型リーシュマニア原虫を媒介するサシチョウバエの同定に成功することができ、また、エクアドルではこれまで報告されていなかったリーシュマニア原虫の侵入を報告するなど、感染原虫種およびベクターに関する新たな知見を得ることができた。また、フィールドでも応用可能な分子診断法を確立することができ、フィールドでの分子診断に応用していく予定である。一方、タイにおける新興リーシュマニア症についても、新たな血清診断法の確立に関して見通しが立った。今後はこの方法を用いて、タイでの感染者の調査を実施するとともに、ベクター調査も展開したいと考えている。 これら本年度に得られた研究成果は、今後のリーシュマニア症の疫学調査研究や感染・病態リスク評価システムの構築にも大いに貢献すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)LAMP法を用いた迅速分子診断法(FTA-LAMP)の応用:H27年度に確立したFTAカード検体を鋳型に用いたLAMP法を、フィールドでの分子診断法に応用する。2)リーシュマニア症の大規模疫学調査:我々が確立したFTAカードを用いた分子疫学調査法を用いて、エクアドル、ペルー、ベネズエラなどの疾病流行地域に分布する原虫種を明らかにする。3)リーシュマニア原虫の簡易同定法の開発:リーシュマニア原虫種を簡便に同定することができるPCR-RFLP法の確立および応用を行う。4)タイのリーシュマニア症の血清診断の確立と応用:タイで流行する新規原虫種の抗原タンパクを用いた血清診断法を確立し、感染者への応用を試みる。5)ベクター(病原体媒介性節足動物)の大規模調査:我々が開発したベクターの大規模調査法 [mass screening (MS)-PCR法およびMS-LAMP法] を用いて、エクアドル、ペルー、タイおよびその周辺国におけるベクター調査を実施する。6)リーシュマニア原虫へのLRV感染調査:リーシュマニア原虫分離株および感染者から直接採取した検体を用いて、LRVの感染状況を調査する。
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