研究課題
ウクライナ国が内戦状態に入り、混乱した状態が続いているため、当初、予定していた放射性セシウムによる中・長期的な内部ひばくの実態を明らかにするために予定していた調査が遅れている。しかし、共同研究先であるジトーミル国立農業生態学大学の学長および地域エコロジー問題研究所所長を招き、第84回日本衛生学会学術総会で、シンポジウム「放射能汚染地域に生きる~社会医学的アプローチによるチェルノブイリ・福島の考察~」を開催し、福島県内の汚染地域に対して有用な情報を得ることができた。同シンポジウムは、福島県内の新聞社により紹介され、チェルノブイリ汚染地域から福島に対する助言となった。今年度は、上記の理由から福島県内外に於ける放射性ヨウ素による初期の内部被ばくを探るため、ベラルーシ共和国医学再教育アカデミーを訪問し、今後の調査協力を要請した。昨年度より、交流していたブレスト州立内分泌診療所では、同州に於ける事故前から現在までの甲状腺がん(罹患率)の推移に関して、海外からの資金提供により国際援助により検診精度の改善などがある度に罹患率が上昇することを確認した。本来、スクリーニング効果であるならば、発見時こそ罹患率は増えるが翌年から自然発生程度の罹患率になるまで減少し、あとは一定を保つはずであるが上昇傾向は続いているため、スクリーニング効果ではなく、原発事故由来の甲状腺がんが長期に及び発生していることが明らかとなった。さらに、事故発生から10年間は小児(14歳以下)で上昇傾向を示すが、その後は2003年までの6年間は思春期(15~17歳)の発生件数が上昇していた。このことは、事故当時、新生児から小児であった者が、一定の潜伏期間を経て発症していると考えられる。この結果は、第8回環境省主催の東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議のヒアリングにて報告した。
3: やや遅れている
ウクライナ国が内戦状態に入り、混乱した状態が続いているため、当初、予定していた放射性セシウムによる中・長期的な内部ひばくの実態を明らかにするために予定していた調査が遅れている。初年度、回収したカルテの解読については専門家を交え検討しているが、手書きのカルテ故に非常に難解であることから9名までしか出来上がっていない。
【①罹患率調査】ウクライナの汚染地域に暮らす住民に対し、原発事故前後での疾病に関して、引き続き、カルテの翻訳を行い分析を今年度中に開始する。【②内部被ばく調査・食事調査】ウクライナの汚染地域での食事調査と内部被ばく調査に関しては、これまで現地の研究者が用いて来た食事調査票に基づき調査を行なっていたが栄養学的知見が含まれていなかった。そこで、食事調査票を見直しを行う。また、内部被ばく調査対象者に対しても内戦前後での生活環境の変化を調べ、調査自体が続行可能かを検討する。【③精神的ストレスに関する調査】日本国内では、県外避難者に対する調査を開始した。ウクライナ国では、内戦により経済が疲弊していること、酷な情勢の不安定生から精神的ストレスが増加していることが予想されている。そのため状況を鑑みて、ベラルーシでの調査も検討している。【④初期被ばく調査】ベラルーシで開始した甲状腺がんの罹患率調査に関しては、事故前後で対象となるベラルーシ共和国ブレスト州内の人口統計などを集め調査精度を上げる。
【依頼原稿】木村真三 危険度が増した山菜・きのこ類、魚種により基準値を上回る濃縮,食べもの通信529, 22-23, 2015【インタビュー】木村真三 先の見えない避難者に 正しい情報と生きる糧を, 日本医療福祉生活協同組合連合会 comcom 571, 17-19. 2015
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