研究課題
ウクライナ国ジトーミル州ナロージチ地区において実施している住民の罹患率調査は、11家族33名について医療カルテ収集が終了。うち9家族について、分類のための個人票作成、診断・罹患状況および検診・被ばく検査の実施状況等の翻訳が順調に終了した。残る2家族についても間もなく終了する予定である。診断・罹患状況はICD-10コードで分類し、量的解析に向けた準備を行っている段階である。また、同地区住民に対しホールボディーカウンターによる内部被ばく検査、放射性核種の摂取状況を調べるための食事調査(陰膳法)も継続的に実施しており、チェルノブイリ原発事故発生から29年が経過した段階でも、ウクライナ国内での基準値を超える内部被ばくがあることを確認している。高い数値が見られた住民には、本人に通知し個別指導を行った。食生活に関する聞き取りや食品ごとの放射能調査から、森林で採取した茸や果実等だけでなく、微量ではあるが小麦など主食からも放射性物質が確認されており、住民報告会、学会等での報告を行っている。一方、チェルノブイリ原発事故後の定住者と強制移住者の精神的ストレスについての調査については、30kmゾーンにおける定住高齢者の訪問と個別インタビューによる聞き取りを行った。今後は日本国内での福島第一原発事故被災地域における状況との比較ができるよう、対象者数を増やす予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究の初段階として目標としていたカルテの収集等は、翻訳作業が順調に進んでいる。疾患罹患状況などの長期にわたる一連の記録を確認することができており、今後は分析を中心に行う。同時に、背景となる保健医療事情の変化についても現地研究機関・病院などと協力して情報収集を進めている。内部被ばく調査、食事調査についても季節毎の食生活の特色などを正確につかむため、現地の四季にあわせて実施継続している。特に、食事全量に含まれる放射性物質だけでなく、1食分に使う食品ごとに分けて測定・分析を行っており、個人ごとの食事摂取量も測定していることから、放射性物質の摂取状況について個別のフィードバックを行うことが可能な状況である。
【①罹患率調査】医療カルテの収集と翻訳が進んでいるため、分析を計画通り実施し、地域住民の罹患の傾向について報告することを目標とする。【②内部被ばく調査・食事調査】四季を通じた住民の内部被ばく量調査を計画的に実施しており、その推移について、食事調査とあわせ、経口摂取による内部被ばくへの影響について共同研究者とともに検討し報告する。食品毎の分析により、汚染の可能性の高い動植物の特定を季節ごとに詳細に行うとともに、被ばく予防対策について改めて周知と個別対応を行う。特に、チェルノブイリ原発事故後に生まれた世代について、職業や居住地、生活状況についての聞き取りも重点的に実施する。【③精神的ストレスに関する調査】チェルノブイリ原発事故被災者の聞き取りについては、被災者自助団体・支援団体と協力しながら継続的に行う。翻訳・通訳・分析に時間がかかっているが、対象者数を増やしながら順次実施し報告することを目指す。
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