チェルノブイリ原発事故によりウクライナ国内で最も汚染されたジトーミル州ナロージチ地区における被ばく調査を継続して行なっている。当年、一人の老人が老衰のため亡くなり被験者数が32人となった。これまでの研究から、彼らの食事調査と内部被ばくには季節との相関性が明らかとなった.さらに、季節変動により内部被ばくも上下することが分かって来た。その結果、夏のベリー類、秋のキノコ類の収穫により被ばく量が上昇した。しかし、この地域は冬期に生鮮食料品が不足するため、夏、秋に採れた食品を保存食品としてピクルスにする。そのため冬場の被ばく量は思いのほか高いことが分かった。調査から、冬場は重労働が減るため代謝量の減少より放射性セシウムの体外への排泄も減ることも内部被ばくが高いことが分かった。複数年の調査から、内部被ばくの要因には気候変動も関係することが分かってきた。調査を開始した一昨年から、夏場の降雨量が極端に少なく、予備調査を行った初年度に比べ、ベリー類、キノコ類の収穫量が著しく少ないために内部被ばく量も減った。 また、現在もミルクに放射性セシウムが含まれていることが判り、予防的措置として対策を講じねばならない。こうした汚染牛に関する長年の研究成果を広く伝えるため、共同研究者であり、チェルノブイリ原発事故当時にジトーミル国立農業生態学大学長を務めたヴォロディーミル・スラヴォフ教授を日本微量元素学会の依頼により、学術総会でシンポジウムを開催した。 環境放射能調査としては、チェルノブイリの汚染と同様に福島の汚染を知ることが福島の環境修復につながるため、調査を行った。その結果、福島県を除く東北地方、特に山形県の汚染は強いことが分かった。 なお、これらの成果をまとめるため、現在、共同研究者達と協議を重ねている。
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