研究課題/領域番号 |
25257505
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
青山 温子 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40184056)
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研究分担者 |
八谷 寛 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30324437)
磯 博康 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50223053)
松山 章子 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 教授 (70404233)
平川 仁尚 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (00378168)
江 啓発 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (20713887)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 危険因子 / 低所得層 / バングラデシュ / パラオ / 外国人労働者 / 疫学調査 / 質的調査 |
研究実績の概要 |
バングラデシュでは、平成27年度後半から平成28年度前半までに、都市部貧困層地域住民を対象とした疫学調査を実施した。男女・世帯所得水準別の4層各500名・計2000名を目標として、WHOの標準調査方法に準じた方法て調査した。質問票調査に回答したのは2551名、うち身体測定・血液検査まで実施したのは2009名であった。その結果、以下のような有病率が判明した。たばこ使用者:男性59%・女性22%、過体重・肥満:男性19%・女性39%、低体重:男性21%・女性7%、高血圧:男性19%・女性21%、糖尿病:男性15%・女性22%、高総コレステロール:男性26%・女性34%、低HDLコレステロール男性73%・女性56%、高LDLコレステロール男性12%・女性13%。男性では過体重と低体重が同程度であり、途上国都市貧困層の特徴と考えられた。糖尿病有病率はWHOの推定値よりかなり高く、また過去の報告と異なり女性のほうが高かった。空腹時血糖が測定できなかったため、HbA1c値により診断したが、途上国の疫学調査でのHbA1c測定は少なく、さらに検証が必要である。現地でシンポジウムを開催して、調査結果を関係者に報告、現地の新聞にも報道された。この疫学調査結果と、平成26-27年度に実施した社会人類学調査の質的分析結果については、それぞれ学術論文としてまとめ、現在投稿中である。平成26年度に実施した世帯調査結果については、学術論文として発表した。 パラオでは、既存の全国調査結果を解析し、パラオ在住フィリピン人は、パラオ人に比して肥満有病率が低く、非肥満者にも高血圧・高血糖がみられることを明らかにした。今後、フィリピン人の質的調査結果と合わせて、分析をすすめる。バングラデシュ人については、対象者が少なく、疫学調査・質的調査の結果の混合分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、平成29年度に、現地の関係者に対する調査結果のフィードバックをする計画であった。しかし、平成28年度前半に疫学調査を完了、予備分析結果を報告書としてまとめ、現地でシンポジウムを開催して関係者にフィードバックすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) バングラデシュ これまでの研究により、空腹時血糖測定が難しい場合、HbA1c測定が有効と考えられた。しかし、開発途上国での疫学調査でHbA1cを測定した事例がきわめて少ないため、糖尿病判定の妥当性を検証する必要がある。来年度に、耐糖能検査を実施して、HbA1c値測定の有効性を検証する。また、食塩、砂糖、脂肪の摂取量が多いことがわかったので、実際の食事を調査して、エネルギー摂取量など栄養素摂取量を概算する。これまでに実施した質的調査で十分解明できなかった健康行動については、質的調査を追加して、保健医療サービスの質・提供状況、住民の意識・態度、社会環境などの観点から、一連の健康行動を明らかにする。 (2) パラオ バングラデシュ人調査結果の混合分析と、フィリピン人の質的調査結果の解析を進める。パラオのバングラデシュ人の調査結果と、バングラデシュ貧困層の調査結果を、比較解析する。
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