研究課題
基盤研究(A)
ウシ海綿状脳症由来のvCJDは、我が国では1例の発病者しかいないが、英国では180例以上の発病を示している。ウシからヒトへの感染は、ウシ海綿状脳症がコントロールされつつある現在心配事項ではなくなった。しかし、vCJD未発症のキャリヤーからの輸血などによる2次感染の危惧は今も重大な問題である。本研究は、我々が開発したvCJDプリオンの増幅法を用いて、血液などの感染性を検出し危惧されている2次感染を未然に防ぐことをその目的としている。本年度は、vCJDプリオンの増幅を短期間で遂行できる増幅法を開発した。vCJDプリオンの増幅法としてヘパリンを添加したPMCA(protein misfolding cyclic amplification)法を開発してきたが、その検出には2日~4日間必要な1ラウンド処理を8ラウンド行う必要があった。しかし、PMCAサンプルにレジンを加えることによって2~3ラウンドまで回数を減らすことに成功した。また、たった3ラウンドで従来の10-10~11乗倍希釈の検出感度に到達することができるようになった。この時間短縮によって、血液などのチェックに現実的な検査法とすることができるようになった。さらに、英国のスコットランド血液バンクとCJDサーベイランスユニットに我々の開発したPMCA法を導入した。血液バンクでは、まさに本研究の目的を遂行するために、検出系が十分働くかどうかアッセイを開始した。また、CJDサーベイランスユニットには我々の研究室から竹内助教を2014年1月から派遣している。両研究室ともエジンバラにある研究室であるため、竹内助教がPMCA法の円滑な導入に貢献する予定である。検出法の開発、英国への導入など研究は順調に進んでいる。
1: 当初の計画以上に進展している
検出法の改良に関して理由:PMCAチューブに新たにレジンを加えることによって劇的に検出時間を短縮できるようになった。これは、輸血などのチェックには1週間程度で検査を終了する必要があり、そうでなければ使用できる血液の有効期間を短縮することになりかねないからである。ほぼ1週間で検査可能となり、目標としていた検出法の改良はほぼ達成した。英国への導入に関して理由:我々の開発したPMCA法を、英国で応用するのは当初時間がかかるものと考えていた。それはPMCAを行う装置が異なるなど現実問題を解決できるか不明だったからである。しかし、竹内助教を派遣することによって現実的な対応が可能となりつつある。また、すでに輸送した我々のPMCA基質を利用して、2013年中に成果を発表することとなった。予想外の進捗をしめしている。
英国への方法論の輸出が順調に推移しているので、来年度中に我々の到達した感度までの増幅が行えるようになるのかを竹内を中心に調整してゆく予定である。到達目標は、あくまで10-10乗倍希釈のvCJDプリオンが増幅可能となるレベルまで英国の技術を指導・改良する予定である。さらに、予想外の進展の結果新たな研究として、英国側より羊を使用したBSE感染実験のサンプルを供与可能である旨の連絡をもらっている。BSEプリオンを経口で感染させた羊から、発病前、発病後の血液サンプルを一緒に調べてみようという提案である。当初予定していなかった研究であるが実際に遂行可能かどうか新たに検討する予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件)
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