研究課題
2歳未満の急性呼吸器感染に受動喫煙が及ぼす効果を定量的に分析した結果を論文として発表した。前年度から継続して、[1] 2歳検診時採血検体を用いての宿主の感染防御反応性の測定、 [2]RSV重症急性呼吸器感染における母児間移行抗体の効果、[3]HBV感染例の微生物学的・分子疫学的解析によるリスク評価、[4]拠点医療施設での出生コホートの疾患発症の追跡調査、[5]戸別訪問による出生コホートの追跡調査、[6]就学前健康調査を予定した。[1][2][3]については保存検体を用いて解析を進めている。本研究を実施しているベトナム中部でのRSV流行にON1遺伝子型のA型のアウトブレイクが寄与していることが判明した。[4] については、引き続き継時的データを集積している。[5][6]については、前年度から調査地の共同研究者と実施日程を調整して就学後6歳での追跡調査を開始し、本年度に居住地区の保健所での身体測定と発達検査、諸疾患既往歴聴取を完了した。また検診にあわせ、尿・便・唾液・頬粘膜スワブを非観血的に採取した。これらの試料のうち、便からDNAを抽出し、腸内細菌叢を特徴づける16SリボゾームRNA遺伝子のT-RFLP分析を進めた。さらにPCR法でのヘリコバクター感染の検出を試み、抽出したDNAを用いた分析を進めている。一方、アルコール脱水素酵素ADH1Bおよびアルデヒド脱水素酵素ALDH2のアミノ酸置換を伴なう単一塩基多型は、アジア民族の健康諸問題に大きい影響を及ぼしていることが判っている。特にALDH2活性を低下させる単一塩基多型はタバコ煙の健康障害を増強させるリスク因子になりうるため、急性呼吸器感染における遺伝子-環境相互作用の評価には予防医学的意味が高いと思われる。実際ALDH2遺伝子型分析から本コホート研究の対象者にもALDH2活性の低いものが相当数存在することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
おおむね当初の予定通りに就学児の健康調査を実施できた。調査地域の共同研究者との協議の結果、生体試料収集においては、非観血的に収集できるものに限って行なうこととし、このうち腸内細菌叢を特徴づける便のDNA分析を進めることができた。
次年度が本課題の最終年度であるので、保存検体を用いる諸測定を完了させ、分析結果をまとめて発表する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Sci Rep.
巻: 7 ページ: 45481
doi: 10.1038/srep45481.
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