本研究課題の主たる目的は,RSA暗号において秘密鍵が漏洩したときの安全性を究明することである. 平成28年度は,(i) ノイズ付き の秘密鍵が得られた時のRSA暗号,(ii) 格子理論を用いたRSA暗 号の安全性解析を重点的に行った.以下,具体的に,実績の説明を行う. (i)に関して.RSA暗号に対するノイズ付き秘密鍵からの鍵復号に関して,アナログの情報が得られる場合の解析の拡張を行った.従来提案されているアルゴリズムでは,ノイズに関する統計情報が完全にわかっているとき,および,何もわからないときという,理想的な環境のみに適用可能であった.本研究では,これを拡張し,推定分布がわかっている時,およびノイズの分散がわかっている時に有効なアルゴリズムの提案を行い,攻撃の成功条件を求めた.さらに,統計情報が何もわからない時に,得られた系列から分散を推定する段階を経由する攻撃の提案を行った.数値実験により,提案アルゴリズムの有効性を確認した.この結果は,査読付き国際会議1件で発表した. (ii) に関して.RSA暗号に対して秘密鍵が部分的に漏洩したときの安全性評価を行った.これらの攻撃は,様々な攻撃シナリオにおいて多くの研究がなされているが,本研究では,その一般化を行い,従来の研究を包含するとともに,従来よりも,強力な攻撃の提案に成功している.単なる一般化だけではなく,安全性評価をする際に,ツールキットとして利用することが可能である.3つ以上の素数の積からなる公開鍵を用いるRSA暗号の変種方式に対する安全性解析も行った.秘密鍵の下位ビットが漏洩したときの安全性評価を行い,従来の方式よりも強力な攻撃の提案に成功している.これらの結果は,論文誌1件,査読付き国際会議6件で発表し,ACISP2016 Best Student paper Awardを受賞している.
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