太陽電池や風力発電などの自然エネルギーの発生量は日射量・風力によって左右されるため、これらの予測には正確な気象条件の予測が必要である。この目的のため、関東地方を対象として空間間隔5kmの格子点上で、日射量・風力の毎時の予測確率分布を推定するシステムを開発する。日射量予測のポイントはシミュレーションモデルによる雲の再現である。そのために、データ同化手法を用いて、気象数値予報モデルと、地上・衛星・レーダーでの気象観測データを統合し、観測に応じた雲をモデル内に発生させる。予測確率分布はリスク管理を含めた電力配電システムの構築に、また、本システムで同時に得られる気温・湿度などの物理量により、高精度の需要予測に貢献できる。 本年度は、初期アンサンブルと観測誤差のパラメータを推定するプロセスを開発中のシステムに組み込んだ。初期アンサンブルの作成にはシミュレーションの実行結果とグラフィカルモデルによる行列の正則化手法を利用した。観測誤差共分散行列の推定には、最尤推定値を得るEMアルゴリズムを用いることを計画していたが、それを拡張し全非対角要素をベイズ推定するアルゴリズムを開発した。さらに、グラフィカルモデルの適用において、NHMの120万変数に対してはメモリ不足となる可能性があることを考慮して、グラフィカルモデルのパラメータを分割して推定することを繰り返し、最終的に大域的な推定値を得るアルゴリズムの開発を行った。
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