平成26年度から開発を進めてきた「スマートユニバーサルメモリ」のソフトウェアシミュレータを活用して,本研究で開発を進めてきたデータ管理手法の評価を行った. まず,メモリ階層において再利用性の動的評価を行い,より再利用性の高いデータを高位のメモリ階層に配置し,再利用性を失ったデータは速やかにメモリ階層から追い出すことができるデータ管理ポリシを実現するためのハードウェア機構と制御ソフトウェアを完成させ,様々なベンチマークプログラムを用いて評価を行った.評価の結果,本データ管理ポリシにより多くのベンチマークアプリケーションにおいて性能を劣化させずに省電力メモリ階層管理が実現できることが明らかになった. また本研究では,近年のマルチコア化で複雑化するメモリ階層上でのデータ管理を効率化,省電力化することを目的として,コア間で頻繁に共有するデータとコア毎に独立にアクセスされるデータがあることに着目し,データの特性に応じてメモリ階層を分割する機構の提案をその評価を行った.本提案ではメモリ階層においてコア間での共有データのみ保存する領域と非共有データのみを保存する領域に分割する.また,各領域の比率を変化させることができる.これにより,様々な量の共有データをもつ並列アプリケーションで性能向上を実現することを可能とした.ベンチマークアプリケーションによる性能評価の結果,本分割機構により最大78%,平均8%の性能向上をハードウェアオーバヘッド2%以下で実現できることが明らかになった.
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