研究課題/領域番号 |
25280016
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
温 暁青 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20250897)
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研究分担者 |
梶原 誠司 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (80252592)
宮瀬 紘平 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (30452824)
HOLST Stefan 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (40710322)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | LSIテスト / テスト電力 / 低電力テスト / テスト生成 / IR-Drop |
研究概要 |
本年度は、体内埋込み型医療機器向けLSI回路の自己テストにおける入力遷移の分析を研究目標に実施した。まず、大規模なITC’99ベンチマーク回路に対して、自己テストモデルを構築した。自己テストモデルでは、スキャンチェーン数=200、擬似乱数発生器ビット幅=20、移相器構成=20-to-200、空間圧縮器構成=200-to-20、多入力シグネチャレジスタビット幅=20という実用的な構成をとった。そして、様々な応用条件下の入力遷移について調べるため、擬似乱数の数を10,000、30,000、50,000にしてシミュレーション実験を行った。実験では、テストベクトルを機能回路部に印加した後、2回のキャプチャ操作を通じて遅延テストを行うというLOC(Launch-on-Capture)方式を想定して、1回目のキャプチャ操作で入力側で遷移(入力遷移)を引き起こし、2回目のキャプチャ操作で出力側で遷移の伝搬状況について、高いタイミング精度を持つ論理回路シミュレーションシステムを用いて確認した。その結果、入力遷移が出力側まで伝搬する割合という「伝搬率」は平均で17.5%、最大で47.8%であったことが分かった。これは、遅延故障検出に寄与しない無効入力遷移が多く存在することを意味する。従って、無効入力遷移を回路内に伝搬しないように何らかの方式(例えば、選択的入力遷移マスク回路)でマスクできれば、テスト品質(故障検出率)を低下させずに自己テスト電力を大幅に削減することができるという本研究の基本アイディアの有効性は確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的は「体内埋込み型医療機器向けLSI回路の自己テストにおける入力遷移の分析」であった。具体的な研究目標は、自己テストモデルを構築した上、入力遷移の位置や伝搬状況とキャプチャ電力及び遷移故障検出能力との関係を徹底的に分析し、本研究の基礎を固めることであった。本年度は、まず、体内埋込み型医療機器向けLSI回路用自己テストの特徴(ランダムパターン数、クロックドメイン数、テスト対象回路の一般規模、内部スキャンチェーンの数、スキャン最長チェーンの長さなど)について助言を受けた。それから、自己テストの入力遷移の特徴を調べるアルゴリズムを開発・実装した。その後、大規模なベンチマーク回路ITC’99に対して自己シミュレーションを行い、入力遷移の伝搬特徴について詳しく調べた。その結果、当初予定はおおむね達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
〇H26年度: 自己テストにおいて無効入力遷移を選択的に抑えることによって極低電力自己テストを実現するSITM-BIST技術を提案する。まず、パスの起点FFの入出力値をEOR素子で監視することによって入力遷移を検知するユニットの設計を提案する。次に、入力遷移をマスクするユニットとして、FFの内部にマスク機能を追加する設計手法を提案する。その後、ROM方式とネットワーク方式の設計と比較実験を行い、より面積が小さく元の回路のタイミング性能への影響が小さい方式を選択する。 〇H27年度:オンチップの遅延計測回路を搭載した評価用LSI回路を用いて提案技術(SITM-BIST)のテスト電力レベル、テスト電力安全性及びオーバーヘッドなどに関する評価実験を行う。まず、米Boston Scientific社からの助言に基づき、試作回路の仕様を決定する。次に、㈱大日本印刷LSI設計の短納期・低費用の試作サービスを利用して評価回路を試作する。その後、卓上型DFTテスターを導入して評価回路のテスト入力ごとの電力計測で低電力性を評価する他、内部遅延計測ユニットで得られるパス遅延情報で電力安全性を評価する。 〇H28年度: 提案技術(SITM-BIST)を実装し、体内埋込み型医療機器向け実LSI回路に適用することによって実製品評価を行う。まず、SynTest Technology社製自己テスト設計ツール TurboBIST にSITM-BIST技術を実装する。次に、拡張された TurboBIST を用いて、米 Boston Scientific 社から提供される体内埋込み型医療機器向け実 LSI 回路に SITM-BIST を設計する。その後、米 ANSYS/Apache 社製 LSI 回路電力解析ツール PowerArtist を用いて実 LSI 回路の電力解析を行い、SITM-BIST技術の有効性を示す。
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