研究課題/領域番号 |
25280042
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
森 眞一郎 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20243058)
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研究分担者 |
細田 陽介 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80264951)
田岡 久雄 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30367502)
福間 慎治 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50313565)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハイパフォーマンス・コンピューティング / 超高速情報処理 / シミュレーション工学 / 並列処理 / 実時間処理 / 超並列 / 投機計算 / リアルタイムマネージメント |
研究概要 |
[投機的手法を用いたシミュレーションフレームワークに関する研究] (森,田岡,福間) 潤沢な計算資源が存在するという仮定のもと,投機的な事前計算を併用することで通常のストロングスケーリングで得られる計算速度を上回る速度向上をえるシミュレーションフレームワークを構築した.この際,反復型数値計算の高速化に用いられる前処理行列を投機的に計算しておくことで投機ミス時のペナルティを最小化する投機手法を採用した.構築したシミュレーションフレームワークを用いて,64ノードのPCクラスタを用いた予備評価を行い有効性を検証した.その結果を基に,計算機環境の大規模化に向けた情報更新アルゴリズムを開発した. [連続性を考慮した補正計算と多重追跡実行を用いたシミュレーションフレームワークの構築] (森,細田,福間) 我々は線形方程式Ax=b の求解において,係数行列A の近似行列の逆行列を用いた補正計算により高速に逆行列を導出したうえで線形方程式の解を求める逆行列計算モデルと同様の計算手法を採るものの逆行列そのものの導出を行わない直接計算モデルを提案している。そこで,潤沢な計算資源があることを前提として,これら2 つの計算モデルで重複計算を行い,逆行列の導出が完了するまでは直接計算モデルを逆行列導出後は逆行列計算モデルを利用することで実時間応答性を改善するシミュレーションフレームワークの実装を行った.この際,当初計画では逆行列を直接計算モデルに反映させるモデルを検討していたが,通信オーバヘッドを回避するために,各計算ノードが所有する直近の逆行列からの補正計算を行うモデルを新規に提案し実装を行った.また,逆行列計算自体に対しても,通信と計算のオーバラップによる最適化を行ったハイブリッド並列処理方式を導入し高速化に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[投機的手法を用いたシミュレーションフレームワークに関する研究] 256コア(64ノード)のPCクラスタへの予備実装ができており,さらに大規模化した際の課題とそれを解決するアルゴリズムも見つかっている. [連続性を考慮した補正計算と多重追跡実行を用いたシミュレーションフレームワークの構築] 当初計画時の手法の問題点を解決するより優れた実装法の提案ならびにプログラムの最適化による高速化に成功している.
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今後の研究の推進方策 |
[実時間シミュレーションフレームワークの構築](森) 昨年度に設計したシミュレーションフレームワークのマッシブコア環境向け実装を行うとともにフレームワークの基本的な実行特性を解析する.マッシブコア環境向け実装においては,係数行列の変化が頻繁に発生する場合を想定した多段投機手法や多段補正手法を導入する. [誤差解析ならびにシミュレーションモデルの安定性検証](細田,森) 補正計算モデルでは求められた逆行列への計算誤差の蓄積が発生するため,定期的に誤差の蓄積をキャンセルする作業が必要となる.そこで,解くべき問題の条件数と誤差蓄積の傾向を解析するとともに,誤差キャンセルの適切な周期ならびに実装法に関する検討を行う.さらに,条件数が大きい悪条件方程式の高速解法に補正計算モデルを適用した場合の安定性について検証を行う. [予測制御法を用いた電力系統シミュレータによる実用性評価](田岡,森) 数ミリ秒から最悪でも1 秒未満での制御が必要な電力系統シミュレータを実アプリケーションとして投機計算モデルによるシミュレーションフレームワークの実用性評価を行う.特に,発電量・電力消費量の実時間予測に基づく電力系統シミュレータにおける予測モデルを多重・多段投機実行に応用した場合の有効性について問題サイズと実行時間の関係ならびに電力系統制御の質の改善という観点で実用性の評価を行う. [数値シミュレーションデータの実時間圧縮に関する研究](福間,森) マッシブコア環境を想定して提案する2つのシミュレーションモデルでは,大規模な行列データやベクトルデータを多くの計算ノード間で交換する状況が発生する.そこで時系列シミュレーションにおける時間・空間の連続性を考慮した実時間可逆圧縮のためのアクセラレーション手法を開発する.
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末の臨時学内業務等の関係で旅行日程を短縮せざるを得ず、当初予定の旅費額との差額が発生した。 急激な円安にともなう外国製物品の価格高騰や消費税率アップへの対策として平成26年度の物品費として充当し使用する予定である。
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