研究課題/領域番号 |
25280044
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
田中 覚 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (60251980)
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研究分担者 |
陳 延偉 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (60236841)
仲田 晋 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (00351320)
岡本 篤志 大手前大学, 史学研究所, 研究員 (30438585)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザ計測データ / 医用CTデータ / 半透明可視化 / 大規模3次元点群 |
研究概要 |
初年度の研究では,以下に述べるような,ほぼ当初の予定通り研究成果をあげることができた. 1. 大規模計測点群データを,透明度を自在に制御して半透明可視化する手法のプロトタイプを開発できた.入力の3次元現点群データの確率的な増殖または削除によって,透明度を柔軟に調整できることも分かった.10倍程度までの増殖率であれば,理論と正確に一致する透明度が実現される. 2. 滋賀県・栗東歴史民俗博物館の協力を得て,入母屋造りの古民家のレーザ計測データ(約2千万点の3次元点群データ)を用いて可視化実験を行い,有望な結果を得た.古民家の部屋の間取り,柱の位置,障子の状態など,3次元的な内部構造が精密かつ分かりやすく可視化できた.また,視覚ガイドの重畳(融合可視化)がレーザ計測データの半透明可視化の視認性を大幅に向上させることも確認できた. 3. 肝臓の医用CTデータを用いて融合可視化の実験を行い,有望な結果を得た.具体的には,肝臓のボリュームデータと肝臓表面のサーフェスデータ(ポリゴンデータ)を,共に3次元点群データに変換した上で融合して攪拌した後に,我々の可視化手法を適用することで,サーフェスとボリュームを同時に視認でき,レンダリング・アーチファクト(不自然な縞模様)などが一切見られない融合可視化を行えることが分かった. 研究成果の対外発表も順調であった.国際学術論文誌に1件,審査付き国際会議に14件の論文が採択された.可視化分野の世界3大国際会議のひとつ,IEEE Pacific Visualization 2014 において論文が採択され,招待講演でもより詳細な内容を国際発信できた.また,国際会議 Asia Simulation Conference 2013 の採択論文は ,Springer社 のCCISレクチャーノートシリーズから発刊の会議録に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,初年度の目標として以下の2つをあげた:1. ボリューム及びサーフェスに関して透明度を自由に制御できる技術を開発,2. 3次元線群データに関して透明度を自由に制御できる技術を開発.このうち,1. に関しては,上で詳細に述べたように,ほぼ完全に計画を達成でき,実用的なデータ(古民家のレーザ計測データおよび肝臓医用CTデータなど)を用いたテストも十分に行うことができた.一方,2. に関しても理論構築と初歩的な実験に成功している.2. に関しては脳の神経繊維を用いた実験を準備中である. 一方,計画が順調に進展したため,2年目以降に行う予定であった「視覚ガイドとしての幾何学的な形状との融合可視化」に関して,研究を進展させることができた.具体的な視覚ガイドとしては,まずは申請書にも記述した同心球を採用し,有望な結果を得た.今後は,レーザ計測データから自動取得した建物の平面図なども,建物の3次元形状を理解する視覚ガイドとして検討していきたい.このレーザ計測データと平面図の融合は,2年目以降の研究計画として申請書にも記述した,医用ボリュームにスライスを融合させる研究と共通項が多いと予想され,両者の相乗効果による研究の発展も期待できる. さらに,当初の計画には無かった展開研究もスタートできた.スーパーコンピュータによる流体の粒子シミュレーションの出力データとしての超大規模3次元点群に我々の可視化手法を応用し,極めて有望な結果を得ることができた.この展開研究は,流体の粒子シミュレーションの分野で顕著な研究実績のある東京大学の越塚研究室との共同研究である.現在までの研究成果を,多数の国際会議等で発表することができた. 以上のことから,研究は,当初の計画以上に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2年目の計画の中心は,「3次元データと2次元データの融合可視化」としたい. レーザ計測データにおける3次元と2次元の融合は,具体的には,レーザ計測で得られた3次元形状データと平面図,写真などの2次元データとの融合である.レーザによる立体計測データを我々の手法で半透明化することで内部構造の視認が可能になるが,複雑な形状の場合,我々が見慣れた2次元の設計図,構造図などを重畳させることが構造把握を容易にする.平面図をレーザ計測データから自動取得する手法の開発も合わせて行う. 医用計測データにおける3次元と2次元の融合は,具体的には,ボリュームとスライスの融合である.この融合の際に重要なのは,医用スライス画像をも半透明化し,さらに,ボリュームレンダリングと同様に伝達関数によって透明度分布を制御して,スライス上の大事な部分を強調して可視化することである.非一様な透明度での可視化の実現がカギになるが,これも,既に理論上は実現のめどが立っている.着実にプログラムの実装と実データでの実験を進めていきたい. なお,新たな計測データを用いた実験による手法の改善・最適化も着実に進める.レーザ計測データとしては,栃木県の松が峰教会,栗東歴史民俗博物館の釜土のデータなどを予定している.医用計測データとしては,胆嚢,胃,脳のデータなどを予定している.脳に関しては,初年度に行えなかった線群データの本格的な可視化の実験として,神経繊維群の可視化も合わせて行う. 初年度に始まった展開研究「大規模粒子シミュレーションの出力データの半透明可視化」も引き続き進展させる.シミュレーションデータだけで無く,実験データの可視化に関しても我々の手法の適用を検討したい.これに成功すれば,「シミュレーションと実験の融合可視化」という実験解析手法を提案できるであろう.
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