研究課題/領域番号 |
25280045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松浦 幹太 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00292756)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 暗号・認証等 / セキュリティ評価・監査 / サイバーセキュリティ / マルウェア / 仮想通貨 / セキュリティ経済学 |
研究実績の概要 |
社会科学的理論基盤の研究では、計画に従い、基本モデルの完成度を高めた。制度設計のモデルにおいては、従来は一次利用者か二次利用者かという着眼点に基づいていた分類を、個人か法人かという分類に修正した。この修正により、実務展開への道が開けている。実際、最終年度の実案件適用対象を当初計画の国内から国際的なものへ拡大して、制度設計が進んでいる。経済学的なモデルにおいては、従来は統計指標のみに基づいていた代理変数の設定を、実際のインシデント事例から学んだ設定へ進化させた。この進化によって、実際のインシデント事例を踏まえたヒアリング調査の結果との整合性が高い仮説検証に成功した。具体的には、攻撃者の利益確定に直結する脆弱性が損害へ有意な影響を与えていることなどを明らかにした。すなわち、本研究で確立したモデルは、攻撃者も含む多様な利害関係者の行動に関するインセンティブを扱うことができる。主要な成果は、国際誌に採録された。また、平成26年度に国内誌に採録されていた基本モデルの成果が、あらためて論文賞を受賞した。 データ基盤の研究においては、計画に従い、一次処理だけでなく二次処理も含む具体的な技術に取り組んだ。候補として挙げていた3つの技術(サービス妨害攻撃対策技術、匿名化技術、マルウェア対策技術)のうち、とくに匿名化技術に関して、データ基盤とシミュレーション基盤を融合させることに成功した。この融合によって得られた豊富な知見をまとめた論文が、推薦論文として国内誌に採録された。さらに評価方法の完成度も高めた結果を踏まえて、最終年度の実案件適用分野を選定した。すなわち、匿名通信システムの黎明期がそうであったように、テストネットワークの運用と連携が将来大きなインパクトを生み出すと期待できる分散台帳関連の基盤を選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会科学的理論基盤の研究でも、データ基盤の研究でも、国内ではあるがそれぞれ受賞を伴う成果が出ているため。
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今後の研究の推進方策 |
社会科学的理論基盤の研究における仮想通貨に関しては、ビットコインの基盤技術であり他にも広く応用できる分散台帳(典型的にはブロック・チェーン)に対する社会の注目度が、ますます高まっている。データ基盤の研究における匿名化技術と同じかそれ以上に将来的にインパクトが期待できるテストネットワークへの展開を視野に入れて、最終年度の実案件展開を国際的に行う。これによって、本研究の波及効果を計画時よりも一層高めることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年立てた使用計画では「成果発表先を増やすなどして当該資金を有効に活用できる見込み」であったが、幸いにしてコンファレンスよりも難易度の高い英文ジャーナル(掲載費無料)に挑戦するに足る成果が出て、ジャーナルに採録されたため、想定ほど成果発表関連費用が生じなかった。そのため、研究は概ね順調に進んでいるものの、予算執行の観点では次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、多くの技術研究のとりまとめが予定されている。とくに、当初計画では国内のみであった適用対象を、国際連携を含むものへと拡大することにしたため、打合せ旅費等に当該資金を有効活用できる見込みである。
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