最終年度なので、本研究課題採択時の当初計画通り全体のとりまとめを行うとともに、平成28年度交付申請書で「当初計画よりも発展的な取り組み」として実施計画に加えた「技術的な研究と社会科学的な研究の双方にまたがる研究基盤活動への適用」を実践した。具体的には、ブロックチェーン技術の国際的なテストネットワークBSafe.networkをマサチューセッツ工科大学や慶應義塾大学等とともに立ち上げた。欧米とアジアにまたがり、本報告書執筆時点で既に10個以上の拠点が稼働している。テストネットワークの利活用を促進するためには、インパクトのある応用研究を育成する必要がある。ブロックチェーン技術の応用として、金融分野以外では、IOT(モノのインターネット)応用に大きな期待が寄せられている。具体的な応用を考えると、センサーのように計算機資源の乏しいデバイスを含むシステムにおけるプライバシー保護と、そのための軽量暗号技術が実用化のネックとなるものが少なくない。そこで、重要な関連研究として国際共同研究を活用して迅速に軽量暗号技術の研究を行い、査読付きジャーナル論文となる成果を得た。 社会科学的な研究即ち研究基盤に関する制度設計の観点では、平成27年度の成果である法人種別分類の考え方を適用した。テストネットワークの円滑な立ち上がりが、この考え方のもたらしたメリットであるか否かの検証は、今後の追跡研究を待たねばならない。しかし、将来的に大きなインパクトを期待できる社会実装は、特筆すべき成果である。技術的な研究では、平成27年度に査読付きジャーナル論文になる成果を挙げた匿名通信システムの研究において、防御対象をクライアントからサーバへ広げた。本来、査読付きジャーナル論文は最終年度を考えていたが、進捗が早まったため、最終年度はむしろ発展的な研究を開始しその初期成果を国内会議で発表した段階での終了となった。
|