研究課題/領域番号 |
25280048
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高木 剛 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (60404802)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 暗号・認証等 / 公開鍵暗号 / ペアリング暗号 / 離散対数問題 / 大規模計算 |
研究概要 |
次世代暗号として注目されているペアリング暗号は、従来の公開鍵暗号では実現が困難であった暗号プロトコルを構成できるため、クラウドコンピューティング時代に適した暗号として研究開発が活発に行われている。今年度は以下に関する成果を得た。 (1)ぺアリング暗号の安全性の根拠となっている拡大体上の離散対数問題を考察した。JouxらはCRYPTO 2006において、拡大体上の離散対数問題の漸近的に最も高速な手法として数体篩法JLSV06-NFSを提案した。また、素体上の離散対数問題に対する現在漸近的に最速の解法として数体篩法JL03-NFSが知られている。今年度は、JL03-NFSにおいて用いられる2次元格子篩を、3次元へ拡張した格子篩法の構成方法を検討した。特に、2次元の格子篩法において格子点を効率的に列挙できるFranke-Kleinjung法を、3次元の格子篩法に拡張して基底の生成方法および効率的な列挙アルゴリズムの提案を行った。 (2)合成数位数のペアリング暗号の高速演算に関して、2進3進混合形式(w-HBTF)を用いたWindow法ベースのMiller's Algorithmの高速化アルゴリズムを提案した。超特異楕円曲線上のTateペアリングを用いて、Window法ベースのMiller's Algorithmの既存方式と比較したところ、提案アルゴリズムは80ビットの安全性レベルで約11%の高速化が実現できた。 (3)ペアリングを利用した暗号プロトコルの考察を行い、署名付きIDベース暗号化方式に対して、標準モデルにおいて決定BDH仮定の下でIND-CCA2及び計算DH仮定でEUF-CMAと安全性が証明可能となる方式を提案した。複数の受信者を持つ効率的な匿名暗号化方式を考察し、受信者のIDのプライバシとメッセージの秘匿性を同時に達成する方式を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、ジャーナル論文2編と査読付き国際会議論文2編を発表し、国内研究集会での発表3件と国際会議での招待講演1件を行った。特に、ペアリング暗号の安全性評価で用いられる数体篩法に関して、Franke-Kleinjung法の3次元への拡張に関する知見を得ることができた。また、合成数位数のペアリング暗号の高速化手法において、Window法ベースの高速化アルゴリズムを考察した。更には、ペアリングを用いた暗号プロトコルとして、署名付きIDベース暗号化方式および複数の受信者を持つ匿名暗号化方式を提案した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題として以下の3点を進めていく。(1)今年度提案したFranke-Kleinjung法の拡張に関して、基底条件や列挙アルゴリズムを改良し網羅的な格子点の列挙を行う手法を考察する。(2)300ビット以上の大規模な解読実験を行い、篩領域の次元、smoothness bound、篩領域の閾値などの最適な値を考察する。(3)Schirokauerが提案した相対代数体を利用した数体篩法の実装アルゴリズムに関して検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画して物品費に計上していた計算機の購入を本年度は行わなかったため。 数体篩法の数値実験を行うために、計算機サーバや数式処理ソフトウェアなどを購入予定である。
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