研究課題/領域番号 |
25280048
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高木 剛 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (60404802)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 暗号・認証等 / 公開鍵暗号 / ペアリング暗号 / 離散対数問題 / 大規模計算 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ペアリング暗号の安全性評価の研究を進めている。特に、拡大体上の離散対数問題の困難性を評価することを目的として数体篩法の計算量の見積もりを行っている。昨年度には、2次元格子篩法で用いられていた効率的な格子巡回法を、3次元以上の空間上に拡張した多次元格子篩法を提案した。本年度は、3次元領域内の全ての格子点を高速に計算できる条件を考察し、基底の向きやサイズを特定することにより3次元の格子点を単純な演算により列挙できることを証明した。本成果は、平成26年10月22日~24日に札幌コンベンションセンターで開催された情報処理学会コンピュータセキュリティシンポジウムCSS2014において学生論文賞を受賞した。また、昨年度までに研究会や国際会議で発表してきた論文3編を、ジャーナル論文化した(IEICE Transactions, JSIAM Letters(2編))。 一方、ペアリングを利用した暗号プロトコルも考察した。階層的なIDベース暗号において、鍵漏洩攻撃に耐性のある方式を提案した。直交部分空間を用いたデュアルシステム暗号化を拡張することにより、128ビットセキュリティにおいて40-70%の漏洩に対して耐性がある方式を提案した。また、匿名性を持つ空間暗号化方式(Spatial Encryption)を考察した。提案方式は、メッセージ秘守、適応的安全性、受信者匿名性、部分順序代理、短い暗号文などの性質を有する。また、合成数位数のペアリングを利用した方式と、それを素数位数ペアリングを利用する方式への変換方法も議論した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、ペアリング暗号の安全性評価に関する論文で、情報処理学会コンピュータセキュリティシンポジウムCSS2014において学生論文賞を受賞した。また、昨年度までに研究会や国際会議で発表してきた論文3編をジャーナル論文化した(IEICE Transactions, JSIAM Letters(2編))。更に、ペアリングを利用した暗号プロトコルの構成においてジャーナル論文を2編発表した(Information Sciences, Security Communication Network)。これは、当初の計画以上の進展となる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後もペアリング暗号の安全性評価の研究を継続して行う予定である。特に昨年度に提案した格子篩法におけるFranke-Kleinjung法の3次元版を実装しアルゴリズムの性能を評価する予定である。また、2015年になり拡大体上の数体篩法の漸近的計算量を改良した論文が発表されているため、それらの実用レベルの鍵サイズでの有効性を検証する。また、ペアリングを利用した暗号プロトコルの研究も継続して進めていく計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26度は、発表予定していた計算機の購入や海内からの研究者の招聘を行わなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は、得られた研究成果を国際会議で発表する予定であり、海外からの研究者の招聘も計画している。
|
備考 |
|