研究課題/領域番号 |
25280048
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高木 剛 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (60404802)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 暗号・認証等 / 公開鍵暗号 / ペアリング暗号 / 離散対数問題 / 大規模計算 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ペアリング暗号の安全性の根拠となる拡大体上の離散体問題の困難性を考察している。大きな標数を持つ拡大体上の離散対数問題を高速に解くアルゴリズムとして数体篩法が知られているが、2015年になり数体篩法の計算量が大幅に改良されてきた。実際、Asiacrypt 2015において、BarbulescuらはTower Number Field Sieve (TNFS)を再考し、ペアリング暗号の高速実装で利用される特殊な形の標数pに対して従来より計算量が低下することを示した。その後、Kimらは標数のサイズがmediumとなる場合にも計算量が低下するExtended Tower Number Field Sieve (exTNFS)を発表した。本年度は、これらの拡大体に対する数体対篩法の計算量の改良状況をサーベイ論文としてまとめ、2016年1月に熊本で開催された2016年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2016)で発表した。また、昨年度までに提案した3次元の高速な格子篩法に関する論文をIACR ePrintに投稿した。 一方、ペアリングを利用した暗号プロトコルの研究も進め、漏洩に耐性のある関数型暗号(The Computer Journal)、鍵の失効が可能となるIDベース署名付き暗号化方式(International Journal of Network Security)などを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ペアリングを利用した暗号プロトコルに関してジャーナル論文2編(The Computer Journal, International Journal of Network Security)を発表し、2015年に計算量の低下があった数体篩法(ex)TNFSに関するサーベイ論文をSCIS2016で発表するなど、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、H27年度に計算量が低下した数体篩法(ex)TNFSに関して、暗号方式で利用される数千ビットの鍵長に対する有効性を考察する。また、ペアリング暗号で用いる特殊な標数pの形に応じて、(ex)TNFSの高速化の割合がどのように変化するかも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に利用を予定していた計算機が未購入であり、更には予定していた国際会議への参加を見送ったため、今年度の予算を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は本研究課題の最終年度にとなり、研究成果の発表による出張費や参加費、ジャーナル論文の別刷費などの予算執行を計画している。
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