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2014 年度 実績報告書

リスク態度と情報探索態度が実場面での商品選択に与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 25280049
研究機関東京大学

研究代表者

植田 一博  東京大学, 大学院情報学環, 教授 (60262101)

研究分担者 鮫島 和行  玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30395131)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード認知科学 / 脳・神経 / 意思決定 / 消費行動
研究実績の概要

昨年度は,実験室実験により,新商品の選択に情報探索態度,すなわち新規情報の探索を重視する傾向が関係していることを,商品選択課題ならびにfMRI計測により明らかにした.本年度は,その結果を,実際の購買データを用いて追認できるかどうか検討した.
具体的には,1年間のビール類の実購買データを用いて,購買におけるバラエティーシーキングやブランドスイッチと関連付けられる指標とBandit task実行時の情報探索態度(新規情報の探索傾向)とに相関があるのかどうかを検討した.ビール類を比較的多く(月24本以上)購入しているヘビーユーザのビール類の実購買データを,モニターの実購買データを取得しているデータ提供会社より購入した.そして,そのデータを用いて,モニターごとに,購買したブランドの多様性を示す指標(バラエティーシーキング)であるエントロピーH,購買しているブランドの変化を示す指標(ブランドスイッチ)であるJSダイバージェンスDJSを算出した.同時に,それらモニターに対して,Bandit taskならびにパーソナリティ検査の一つであるクロニンジャーのTCIを実施し,Bandit taskから計測できる情報探索態度(新規情報の探索傾向)およびTCIにおける新奇性追求,損害回避,報酬依存から算出できる性格特性と,エントロピーおよびJSダイバージェンスとの間に相関がみられるかどうかを検討した.その結果,エントロピーおよびJSダイバージェンスとBandit task実行時の新規情報の探索傾向とには有意な相関が見られた一方で,TCIにより算出される性格特性とには有意な相関は見られなかった.このことは,新規情報の探索傾向が強い人ほど,バラエティーシーキングやブランドスイッチを行い易いことを示唆しており,昨年度得られた知見を補完するとともに,マーケティング実務にも重要な知見を与え得る.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた,経頭蓋直流電気刺激装置を用いた実験は実施できなかった.その一方で,実購買データを用いた,情報探索態度と商品購買傾向(バラエティーシーキングやブランドスイッチ)との関係は分析できた上に,クロニンジャーのTCIから算出される性格特性と商品購買傾向との関係も分析できた.以上を総合すると,おおむね順調に進展していると評価できる.

今後の研究の推進方策

本年度は,実購買データから算出される,購買したブランドの多様性を示す指標(バラエティーシーキング)であるエントロピーH,購買しているブランドの変化を示す指標(ブランドスイッチ)であるJSダイバージェンスDJSと情報探索態度(新規情報の探索傾向)との関係を探ったが,この分析は,昨年度得られた,新規情報の探索傾向が強い人ほど新商品を購入しやすいという結果をダイレクトにサポートするものではない.そこで来年度は,同じ実購買データからいわゆる新商品を抽出し,新商品の購入頻度と情報探索態度(新規情報の探索傾向)との関係をダイレクトに検討し,昨年度得られた知見の頑健性を実購買データから検討する.
また,同様にこれまでに得られている結果の頑健性を検証するために,経頭蓋直流電気刺激を与えて右前頭極の活動をコントロールすることで,情報探索態度および新規商品の購入傾向に変化が生じるのかどうかを検討する.
さらに,これまでの一連の実験や分析から,商品名が購買に強く影響することが予想されている.将来的にこの点を実験的に解明するための準備として,競馬を対象に,馬の名前が馬券購買に与える影響,ならびに都市の名前がその都市に対するイメージに与える影響を,統計データと実験室実験により明らかにする.
そして,新商品選択に関わる脳基盤の解明,ならびに実購買データを用いた新商品選択に関わる認知機構の解明の成果を総合し,本研究の成果としてまとめる.

次年度使用額が生じた理由

当初計画では,分担機関である玉川大学において,経頭蓋直流電気刺激装置を用いた実験を行う予定であったが,担当する院生が病気で大学にあまり来られなかったため,実施できなかった.そのため,本実験の実施に関わる経費に関して未使用額が発生した.

次年度使用額の使用計画

経頭蓋直流電気刺激装置を用いた実験を行うために必要な,実験参加者への謝金,実験の実施や実験データの分析を補助してくれる実験補助者への謝金,脳活動解析に関わる消耗品の購入,成果発表と研究打ち合わせのための旅費,その他実験参加者募集広報費用(チラシ作成等)に使用する.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち謝辞記載あり 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] インターネットを利用した情報収集傾向が技術とサービスに関するアイデア生成に与える影響2015

    • 著者名/発表者名
      和嶋雄一郎, 足利純, 鷲田祐一, 植田一博
    • 雑誌名

      電子情報通信学会和文論文誌D

      巻: J98-D ページ: 225-235

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] マーケティングを変える心理学,脳科学2014

    • 著者名/発表者名
      植田一博, 鮫島和行
    • 雑誌名

      NEXTCOM

      巻: 20 ページ: 4-13

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The Effect of an Analytical Appreciation of Colas on Consumer Beverage Choice2014

    • 著者名/発表者名
      Yamada, A., Fukuda, H., Samejima, K., Kiyokawa, S., Ueda, K., Noba, S. & Wanikawa, A.
    • 雑誌名

      Food Quality and Preference

      巻: 34 ページ: 1-4

    • DOI

      10.1016/j.foodqual.2013.11.008

    • 査読あり
  • [学会発表] Information Seeking in Consumer Behavior: An Analysis of Purchase History Data2015

    • 著者名/発表者名
      Nomura, I., Samejima, K., Moda, I., Kato, N. & Ueda, K.
    • 学会等名
      Cognitive Neuroscience Society 2015 Annual Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      2015-03-31
  • [学会発表] 馬名の文字数は馬券購入行動に影響を与える―名前の情報量に基づく分析―2014

    • 著者名/発表者名
      本田秀仁, 和嶋雄一郎, 松香敏彦, 植田一博
    • 学会等名
      HCGシンポジウム2014
    • 発表場所
      海峡メッセ下関・下関市・山口県
    • 年月日
      2014-12-17
  • [学会発表] 実学としての実験心理学5―工学・産業・社会へのアプローチの最前線2014

    • 著者名/発表者名
      入戸野宏, 永井聖剛, 熊田孝恒, 藤崎和香, 須藤智, 和田有史, 植田一博
    • 学会等名
      日本心理学会第78回大会
    • 発表場所
      同志社大学・京都市・京都府
    • 年月日
      2014-09-12
  • [備考] 植田一博研究室

    • URL

      http://www.cs.c.u-tokyo.ac.jp/

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公開日: 2016-06-01  

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