研究課題
本研究の目的は時間認知における海馬機能に焦点を当て,電気生理学的にその脳内メカニズムを明らかにしようとするものである。今年度は,時間認知課題であるピーク法をラットに訓練し,課題実行中のラットの海馬θ波測定を継続した。マウスも同様に測定するために30秒のピーク法を訓練した。マウスは体重がラットの約10分の1であるために,餌を強化子として実験を行う場合に日数を多く必要とする。長期間にわたるピーク法の訓練を含めた実験を安定的に実施するために,消耗品である餌,床敷きと動物の維持管理のための謝金を使用した。測定した海馬θ波の客観的評価としてはFFT 分析をすることによりパワー値として算出できる。時間経過と海馬θ波の対応関係を周波数帯域で区分してパワー値を求めた。マウスでは一般的に実験で用いられるC57BL/6J 系と,研究分担者が用いている左右臓器が転位しているiv マウスを用いた。マウスの訓練が想定したよりも時間がかかっているが,ピーク法による時間的な行動パターン形成後にマウスも脳波計測を行う。本研究は時間認知に関する行動実験と関連する海馬神経回路の解明のためのin vitro 研究から構成される。神経回路解明のために伊藤教授等は抗原提示タンパク質MHC1の受容体の一つであるPirBをノックアウトしたマウスを用いて電気生理学的解析を行い,このマウスでは海馬神経回路の非対称性が完全に消失していることを証明した。この事実はMHC1/PirB系が海馬神経回路の非対称性形成に重要である事を示唆している。研究代表者である坂田が研究全体を取り仕切り,in vivoの時間認知に関する行動実験を実施している。研究分担者の伊藤教授は iv マウスの供給と,in vitro 研究によりiv マウスの海馬神経回路の特性を確認する研究を継続中である。
2: おおむね順調に進展している
ラットを用いた時間認知課題であるオペラント条件づけのピーク法の訓練が先行研究で報告されているように順調に進んでいること,学習の遅れていたマウスも時間的行動パターンの形成が見られラット同様に脳波計測の目途がついたこと,および時間認知課題実行中のラットの海馬θ波のデータも集まり,次年度にはマウスの海馬脳波測定も期待できるため。
今年度と同様に次年度以降もラット,マウスのピーク法の訓練を続け,時間認知における海馬機能の電気生理学的検討を進めるために,計画通りラットとマウスの海馬θ波を計測してデータ数を増やし,ウェーブレット解析による分析を進める予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
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