研究課題/領域番号 |
25280052
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
児玉 亨 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (20195746)
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研究分担者 |
田中 進 関西医科大学, 医学部, 講師 (30399472)
渡辺 正孝 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, シニア研究員 (50092383)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デフォルト活動 / 前頭葉 / ドーパミン / 霊長類 |
研究実績の概要 |
認知情報処理にはデフォルト活動と認知制御活動との間の円滑な相転移が要求される。本研究では高次脳機能を統括している前頭前野を中心に後部帯状回、楔前部、頭頂連合野後半部、中側頭回などにおける局所脳波と神経伝達物質の測定を行い各脳部位間の情報の流れとその制御に関わる神経伝達物質機構を調べている。 神経伝達物質の動態:デフォルトネットワークの前部を担うサル内側前頭前野における神経伝達物質の変化を調べたところデフォルト時には注意集中時と比べてドーパミン放出の増加が見られ、グルタミン酸放出に変化がないことが観察された。 一方、デフォルトネットワークに属しないサル補足運動野においては、デフォルト時は注意集中時と比較してデフォルトネットワーク部位と同様にグルタミン酸放出量には変化が無かったが、ドーパミンの放出の減少が観察された。我々はこれまでも、認知制御に関わるいくつかの前頭前野に於いてドーパミンとグルタミン酸の関係を報告してきたが、デフォルト時にドーパミン放出の増加する部位は無く、デフォルトシステム部位の特異性が明らかになった。今後ほかのデフォルト部位に於いてドーパミンがどのように関係するか比較検討する必要性がある。 局所脳波の解析:1頭からの局所脳波記録から相互寄与率の解析中である。さらに例数を増やすために2頭の記録を継続中である。 遺伝子解析:マカクおよびマーモセットにおける遺伝子情報はデータベース情報が十分でなく難航している。副次的にマーモセットに於いて覚醒度および報酬に関連するペプチド、オレキシンの遺伝子配列が特異的であることが判明、機能を比較するために抗体を作製し検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度同様、計画の中心となるニホンザルの「デフォルト-認知制御」の基盤となる神経ネットワーク機構をフィールドポテンシャルと神経伝達物質動態から検討する試みは順調に成果を上げている。マーモセットの注意障害モデルと正常動物を用いた脳波記録およびフィールドポテンシャル記録は技術的問題が解決され、例数を増やし長期記録を継続中である。 遺伝子発現からのアプローチに関しては公開データベース上、マーモセット遺伝子情報が十分に利用できないため独自に検討を進めているが、デフォルト異常に関連する遺伝子発現を見いだすには至っていない。また遺伝子解析チームの一員の転出もあり計画の再検討が必要になる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
フィールドポテンシャルの検討:26年度に引き続き「デフォルト-認知制御」におけるフィールドポテンシャルのデータを増やすとともに、26年度に開発を進めてきた相互寄与率推定プログラム「TMIMS-RC2014」により部位間の情報伝達の変化について検討し報告する。 神経伝達物質の検討:26年度の解析結果からデフォルト部位におけるドーパミンの増加がデフォルトの状態を制御している可能性が示唆された。本年度はドーパミンを中心にグルタミン酸との関連をまとめて論文投稿を進める予定である。 薬理的神経伝達物質操作:ドーパミンアゴニスト、アンタゴニストの投与、およびメチルフェニデートによるドーパミン-グルタミン酸変化についてのデータが集積されてきている。これらの結果をまとめて論文投稿準備にかかる。 遺伝子検討:ドーパミン関連の遺伝子発現にリソースを集中して検討する。遺伝子発現に有意な変化が見られない場合には定量解析をスキップ、遺伝子干渉による発現操作を行いデフォルト活動の変化について今後の研究につながるデータを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マカクを用いた実験が順調であり予想より初期立ち上げに経費がかからなかったため2,3年目に経費を分割持ち越しすることが可能となった。また、解析機器の納品が一部遅れ27年度支払いとなったことも持ち越しの要因となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度でこれまで蓄積された膨大な脳波情報の解析の費用と成果発表のために使用する予定である。
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